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部活の地域移行、永岡文科相の〝強がり〟が虚しい

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 部活の地域移行に、早くも暗雲が漂いはじめている。永岡桂子文科相の発言が、〝強がり〟にしか聞こえてこない。

| 教員の多忙化解消にふれない文科相

 部活の地域移行の達成目標を、文科省は2025年度末としてきた。これについてNHKは16日朝、「地域によっては指導者や施設の確保が難しいという指摘が出されたことから、来年度は調査を行うなど対応を見直すことになりました」と伝えている。

 この報道について16日の閣議後記者会見で記者から、「これ(NHKの報道)の真偽と、仮に事実であった場合は、2025年度末までの3年間で地域移行を行うという目標に影響すると思うんですけど、目標の断念であったり、変更というのは考えていらっしゃるのか」という質問があった。

 これに永岡文科相は、「少子化のなかで子どもたちが継続してスポーツや文化に親しむ機会を確保するために、部活動の地域移行や地域スポーツ・文化クラブ活動への移行に向けた環境整備に取り組む、これはたいへん必要であると考えております」と答えている。部活動の地域移行は、教員の多忙化解消が大きな目的だったはずなのだが、そこにはまったくふれていない。地域移行しなければ子どもたちがスポーツや文化に親しむ機会がなくなる、とも聞こえる。

 あいだにほかの質問を挟んで、「25年度末までの目標、これ、変更ですか」と重ねての記者から質問がされている。

 永岡文科相は、「令和5年度(2023年度)からのスタートですね、これはしっかりとやらせていただきます」と答えている。NHKは「来年度は調査」と報じているのだが、永岡文科相は「調査」なのか「本格的なスタート」なのか明確にはしていない。

| 地域へ丸投げする気まんまん

 そして地域や学校ごとの事情が違うとして、「自治体とそれから学校と先生方、またPTA、そして地域の方々、そして文部科学省といたしましても、しっかりと連携をして、ひとつひとつの課題を克服するために、やらせていただきたい」と続けている。具体策を述べているわけでも、「文科省がやる」と明言しているわけでもない。「連携」といいながら、地域に丸投げしているようにしか聞こえない。

 それでも、「25年末までということは、軽々に、それを外すということは申し上げられませんけれども、議論をしながら、検討しながら進めさせていただきたい」と答えている。25年末の達成目標は取り下げないけれども検討はしていく、というのだ。「はっきりしろ」といいたくなってしまう。

 達成目標は降ろさないと永岡文科相はいうものの、それが実現不可能な現実がある。2023年度予算案で、部活動の事業費として約28億円しか認められない見通しだ。スポーツ庁と文化庁は23年度に全国約9000校の3割で地域移行を始めるために、118億円の概算要求を計上していた。それに対して28億円、22年度の第2次補正予算で前倒しした19億円と合わせても47億円と、概算要求の半分にも満たない。

 これでは文科省の目標が達成されていくとは、考えにくい。25年度末の達成目標を外さないという永岡文科相の発言は、〝強がり〟にしか聞こえてこない。概算要求が満額認められたとしても、指導員の確保難など地域移行での問題は山積している。

 それがわかっているのかどうか、自ら掲げた達成目標にはこだわりを見せながら、対応は地域に丸投げする気まんまんの永岡文科相の発言には疑問しか感じない。

<参考記事>https://news.yahoo.co.jp/byline/maeyatsuyoshi/20221117-00324217

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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