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まさかのリヤカーで手作り偽ヴィトンを売り歩く女 分かって買った人も処罰に?

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:ロイター/アフロ)

 高級ブランド「ルイ・ヴィトン」を模した財布やバッグなどをリヤカーに積み、東京都内の商店街を転々としながら売り歩いていたとして、64歳の女が書類送検された。インターネットで手に入れた生地をミシンで加工し、手作りしていたもので、価格は本物の30分の1以下だった。300点以上が押収されており、2年間で約90万円を売り上げていたという。

 ブランドの偽物をそうだと分かった上で売れば商標法違反となり、最高で懲役10年、罰金1000万円に処される。販売する目的で所持するだけでも商標権の侵害行為とみなされ、最高で懲役5年、罰金500万円だ。もし偽物を本物だと偽って販売したら、刑法の詐欺罪でも処罰される。こちらは懲役10年以下だが、罰金刑がないから、商標法違反よりも罪が重い。

 今回は本物の新品であれば到底ありえない価格の安さなどから購入者も偽物だと分かって買っており、だまされていないため、商標法違反だけで立件されている。ただ、偽物だと分かって買ったか否かを問わず、購入者が商標法違反に問われることはない。他人に譲り渡すのではなく、単に自分で使用するためだけであれば、買ったり所持したりしても商標権の侵害に当たらないからだ。

 とはいえ、偽物を買うことは販売者による違法行為を助長するに等しいし、手もとにあれば他人に譲り渡すことで罪に問われるリスクもでてくる。安いからといって、偽ブランド品に手を出すべきではない。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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