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ノート(232) 容疑を否認している事件における動機の認定とその重要性

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~続・工場編(25)

受刑340/384日目

動機の重要性

 年度終わりの3月31日であるこの日は土曜であり、刑務作業や屋外での運動、入浴がなかったことから、居室で丸1日すごした。しとしと降り続く雨音を聞きながら、前日の夕刊やこの日の朝刊に目を通すと、大阪地裁で言い渡された大坪さんと佐賀さんに対する有罪判決の概要が報じられていた。

 こうした全面否認事件の場合、単に有罪・無罪という結論やその理由付けだけでなく、裁判所がどのような動機を認定したのかという点も重要となる。本人が何も語っていない以上、様々な証拠から導かれる事実を積み上げて「推認」するほかなく、有罪の結論に至るだけの自然かつ合理的で説得力のある動機と言えなければならないからだ。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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