「他人あての年賀状が届いた」「来るべき人から届かない」 どうすればいい?
年賀状の配達枚数は減少の一途だが、もらうとうれしいことは確かだ。では、他人あての年賀状が間違って届いたり、届くべきものが届かなかったりした場合、どうすればいいか。郵便法の規定を踏まえてみておこう。
受取人に法的義務あり
間違って届いた場合、郵便法が次のように規定している。
「郵便物の誤配達を受けた者は、その郵便物にその旨を表示して郵便差出箱に差し入れ、又はその旨を会社に通知しなければならない」
面倒でも「誤って配達されたものです」と付せんなどに書き、はがれ落ちないように貼り付けた上で郵便ポストに投函するか、その年賀状を郵便局に持って行き、誤配であることを告げて局員に渡さなければならない。何も記載せずにそのままポストに入れると、再び誤配される可能性もあるからだ。
受取人にはそうした法的義務があるので、「お年玉付き年賀葉書」だから当せんしたら当せん品と引き換えてやろうと考え、ずっと手もとに置いておくと、刑法の占有離脱物横領罪に問われる。実際に引き換えたら詐欺罪だ。また、自分あてのものではないからと破り捨てれば、器物損壊罪が成立する。
なお、間違って届いた封書を誰あてのものか気づかないまま不注意で開封してしまった場合、郵便法では、開封した部分を閉じ、テープなどで元の状態に戻し、自らの氏名や住所などとともに「誤って開封したものです」と付せんなどに記載して貼り付けた上で、郵便ポストに投函するか、最寄りの郵便局に持って行かなければならないとされている。
届かない場合は?
毎年律儀に年賀状を送ってくれている人から喪中でもないのに届かなかったり、休み明けに友人から「送った年賀状は見てくれた?」と聞かれ、思い当たらなかった経験をした人もいるだろう。誤配のほか、日本郵便側が集配や仕分け、配達の途中で紛失したとか、郵便受けまで配達されたものの、誰かに盗まれた可能性が考えられる。
この場合、差出人も受取人も日本郵便に調査を求めることができる。最寄りの郵便局に相談したり、インターネットのホームページから依頼すると、差出人から受取人に至るまでの郵便物の流れに従い、関係する郵便局を調査した上で、その結果を教えてくれる。
実際には「調査したものの、分かりませんでした」といった回答となり、さほど期待できないだろう。それでも、この調査がきっかけとなり、アルバイトの配達員らが大量の年賀状を配りきれずに隠したといった事件が発覚し、郵便法の郵便物隠匿罪などで立件されることも現にある。
日本郵便の損害賠償責任は?
ただし、その場合でも、差出人や受取人は日本郵便に損害の賠償を求めることができない。配達されなかったお年玉付き年賀葉書が当せんしており、改めて配達された時にはすでに引き換え可能日から6か月という有効期間を過ぎていたとしても同様だ。
というのも、郵便法は、日本郵便が負担する損害賠償責任の範囲について、書留や代金引換のほか、引受けや配達などを記録する郵便に限定しているからだ。通常の葉書や封書は対象外であり、お年玉付き年賀葉書も同様である。
だからこそ、一般の郵便物は、離島や山間部を含め、全国どこに送るものでも非常に安い同一の料金に設定されている。もし損害賠償責任を拡大すると、大幅に料金を引き上げざるを得なくなるし、より慎重に取り扱われることになり、速やかな配達も困難となる。
同様に、集荷や仕分け、配達の途中で破れたり、濡れたり汚れたりしていても、差出人も受取人も日本郵便に損害賠償を求めることはできない。クレームをつけたら業務改善につながり、謝罪の言葉くらいはあるかもしれないが、それでも金銭的な賠償は行わないルールとなっている。(了)