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ノート(183) 出廷拒否の態度を翻意させるために新たな高検検事まで登場

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~工場編(11)

受刑92/384日目

新たに先輩検事が登場

 この日も、東京高検の和田澄男検事による取調べがあった。総連事件の証人出廷に向けたものだ。

 ただ、前日と違い、この日は東京高検の畝本毅検事も同席していた。中肉で190cmくらいはありそうな高身長、メガネ姿に七三分けで真面目顔、高級スーツをパリッと着こなし、ダンディな人物だ。

 畝本検事は司法修習41期で僕の7期上の先輩だが、大阪地検特捜部時代に仕事をともにし、気心の知れた間柄だった。もともとは東京系の畝本検事が2003年4月に初めて大阪地検特捜部に異動となり、5月に主任として取りまとめた強制捜査が最初の縁だ。

 中規模な事務機器販売会社を舞台にした約3200万円の業務上横領だったが、会社の口座から資金を引き出して着服するというシンプル事件であり、捜査の難易度は低かった。

 そのため、捜査班といってもメンバーは畝本検事と僕、お互いの立会事務官の4人ほどで、裏付け捜査を畝本検事が、逮捕した元業務部長の取調べを僕が担当した。

 このとき、畝本検事から東京地検特捜部における捜査のやり方など、様々な体験談を聞くことができた。その一つが、供述調書へのサインを渋る被疑者の説得方法だった。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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