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ノート(155) 劇的に変化した刑務所での生活環境

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~確定編(6)

受刑20/384日目(続)

8ヶ月で20キロ減

 新入調査を終えると、私物の入った衣装ケースを両手で抱え、刑務官の指示で同じ建物内にある医務部に移動した。

 大阪拘置所では、取調べや接見、面会、診察などのために移動する際、いつも2~3名の刑務官に取り囲まれ、物々しく廊下を進んでいた。これに対し、静岡刑務所では、有罪判決の確定によって罪証隠滅のおそれがなくなったこともあり、1名の刑務官が同行するだけだった。

 ただ、刑務官は受刑者に背後をとられて攻撃されないようにするため、常に受刑者の斜め後ろに位置し、「まっすぐ」「右」「左」「階段を登って」「そこで止まれ」などと言って進むべき方向を指示していた。

 診察室の前の廊下には、電話ボックスサイズに区切られている細長い個室がいくつか並んでおり、ここで少し待つようにと言われた。中に入って椅子代わりの板に座ると、顔から胸にかけての部分だけが隠れる扉を閉められ、鍵をかけられた。

 新入調査室や面会室の横にも設置されており、順番待ちをする受刑者同士が顔を合わせて話をすることができないようにしたものだ。扉を開けると人が飛び出すということで、獄中用語で「びっくり箱」と呼ばれている。

 しばらくして順番が回ってきたので、診察室に入り、医師による診察を受けたが、おざなりで、かなり適当なもののように感じた。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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