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自分に都合のよい証拠や事実は輝いて見える 複眼的な視点の重要さ(2)

前田恒彦元特捜部主任検事

ある強姦えん罪事件を題材に

国賠請求棄却までの経緯

 法曹関係者の間でも話題に上った事件ですので、ご存じの方も多いでしょうが、まず国賠請求棄却までの経緯について簡単にご説明しておきます。65歳だった男性は、自宅の集合住宅で、同居していた養女に対し、11歳だった2004年と14歳だった2008年の2度にわたって無理やり性的関係をもち、胸をつかむなどしたとして2008年に逮捕され、起訴されました。

 この女性はこれ以外にも何度となく男性から性的被害を受けたと述べており、男性は捜査公判を通じて一貫して容疑を否認していました。しかし、女性の告白やその2歳上の兄の目撃証言が決め手となって2009年に大阪地裁で有罪となり、大阪高裁、最高裁を経て2011年に懲役12年の実刑判決が確定しました。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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