ノート(95) 取調べを可視化せずメモも廃棄していたり、起訴前に国会議員を取り調べなかった点について

(ペイレスイメージズ/アフロ)

~整理編(5)

勾留42日目(続)

【再会】

 「取調べやから」

 夕食後、突然、刑務官が自殺防止房まで迎えにやってきた。

――また最高検か。今さら何の用だろう。今度の検事は誰なのか。

 そうしたことを思いつつ、事務棟2階のいつもの9号室に入った。

 驚いたことに、そこにいたのは、約2週間前に最後の取調べだということで握手で別れていた中村孝検事だった。

 さすがに中村検事も、バツが悪そうな顔をしていた。

 「どうしたんですか」と聞くと、厚労省事件の捜査や公判に対する本格的な検証活動を行うため、引き続き僕から聴き取りを行うように指示された、とのことだった。

 三浦守検事の場合と同じく、「検証」とは名ばかりで、その実態は起訴後の被告人に対する強制的な取調べにほかならなかった。

 にもかかわらず、黙秘権の告知をせず、供述調書や取調べ状況報告書も作らず、聴き取りメモを事件記録に編てつすることすらしない、という問題も相変わらずだった。

 大坪さんや佐賀さんの弁護団は、後の裁判の中で、この聴き取りのことに全く触れてこなかった。

 そもそも聴き取りの状況などが証拠として残されていないわけだから、最高検が「検証」という抜け道的な名目を使い、起訴後も僕と接触をしていたということまで考えが及ばなかったのだろう。

 それでも、官僚臭がして取調べの下手な三浦検事よりは、何かと勝手を知っている中村検事の方がやりやすく、話し相手としても歓迎だった。

【本格的な検証活動の開始】

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前田恒彦

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15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。きき酒師、日本酒品質鑑定士でもある。

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