元特捜部主任検事の被疑者ノート(51) 起訴前最後の取調べ 事件を振り返って改めて思ったこと

(ペイレスイメージズ/アフロ)

~解脱編(22)

勾留20日目(続)

【待ち受けるマスコミ】

昼食後、午後1時ころから中村検事の取調べが行われた。

中村検事によると、保釈で拘置所を出ると想定したマスコミが、その場面を撮影するため、大挙して待ち構えているとのことだった。

保釈などあり得なかった。

あえて保釈請求をしない、というのが弁護方針だったからだ。

この点は中村検事にも伝えていたことだった。

【データの印刷日時】

起訴前最後の取調べであり、これまでに事件に関する事情聴取や供述調書作りは一通り終わっていた。

しかし、この日は、中村検事が作ってきていた1通の供述調書を確認し、サインするところから始まった。

文書データの印刷日時に関する簡単な内容のもので、本来は事件の経緯や状況に関する長い供述調書の中に盛り込んでおくべき話だった。

すなわち、最高検が専門業者に委ねて文書データを詳細に解析したところ、データに記録されている「前回印刷日時」というものが判明した。

もっとも、それは上書き保存前に最後に印刷した日時を意味するにすぎず、上書き保存後の印刷日時は全く記録されないことから、「前回印刷日時」と本当の意味での「最終印刷日時」とは必ずしも一致しないものだった。

一方で、当時の検察にはこうした知識まではなく、厚労省虚偽証明書事件に限らず、捜査の過程で文書データを専門業者に委ね、解析するようなことまではやっていなかった、というものだ。

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前田恒彦

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15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信。唎酒師、日本酒品質鑑定士でもある。