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アインシュタイン・河井ゆずるが「かまいたち世代」のネクストブレーク候補である理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家
(写真:アフロ)

7月28日放送の『プレバト!!』の「俳句の査定ランキング」にて、俳句作りに初挑戦したアインシュタインの河井ゆずるが高い評価を受けた。番組で俳句の講師を務める夏井いつきは河井の作品に高得点をつけて、その表現を絶賛した。

もともと河井は何でもこなせる器用な芸人として業界内では知られていたのだが、これまではその能力の割には個人としてスポットを浴びる機会が少なかった。なぜなら、相方の稲田直樹のキャラクターがあまりにも強烈だったため、そちらにばかり注目が集まっていたからだ。

稲田は「よしもとブサイク芸人ランキング」で3年連続1位になった実績を持っている。そのインパクト抜群の容姿は、芸人としては大きな武器である。しかも、彼の場合、自分の容姿をネタにするときにも卑屈さが全くない。むしろ、ポジティブなメッセージを発信し続けていて、容姿よりもその前向きな姿勢こそが人気を呼んでいる。

また、稲田の外見は一部の女性お笑いファンからはむしろかわいいものとして捉えられているようなところもある。彼をモチーフにした「いなだま」というマスコットキャラクターが人気になっていて、関連グッズが飛ぶように売れているほどだ。

アインシュタインがコンビでテレビに出ると、まずは稲田の方に注目が集まるため、河井はそのサポート役に徹するしかなかった。彼はアインシュタインの「地味な方」に甘んじてきた。

しかし、最近になって風向きが変わり、河井がたびたび注目されるようになっている。美容にもこだわりを持っている河井は、女性向け美容雑誌『MAQUIA』でもそのイケメンぶりを披露して話題を呼んだ。

また、麒麟の川島明がMCを務める朝の情報番組『ラヴィット!』では、川島が新型コロナ感染で欠席した際に代役として司会を任されたこともあった。彼はかまいたち、和牛などと同期で芸歴もそこそこ長く、長年ライブや大阪の番組でMCを務めてきた実績があり、その腕は確かである。41歳でありながら小顔でイケメンなので若く見えるし、女性人気も高い。

「ゆず兄」のおもてなしにニューヨークが驚愕

しかも、河井は芸人仲間の間でも評価が高い。その実力を認められているのはもちろん、プライベートでも彼を慕う後輩は多い。ニューヨークの2人も、河井に食事に誘われた際、店の予約から行き帰りのタクシーのセッティングまですべてを河井が仕切ってくれて、そのおもてなしの完璧さに驚愕したという。

通常、芸人同士であれば後輩が先輩を立てるのが普通なのだが、河井は後輩にも気を使わせないように自分から気を使う、という精神を持っている。ニューヨークの2人は河井のことを「ゆず兄」と呼んで慕っている。

芸人の能力をジャンル別に分けた場合、河井はどの要素でも満遍なく高い数値を叩き出す優等生キャラである。これから本格的に全国ネットのバラエティ番組に出るようになれば、さまざまな形で彼の才能が発揮されることになるだろう。気遣いができて見た目も爽やかであるという点は、全国ネットのテレビ番組のMCにも向いている。

将来有望な人材が大勢揃っている「かまいたち世代」の芸人の中でも、かまいたちの次にブレークするのは河井なのかもしれない。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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