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「1人で生きたらぁ!」地下ライブで腕を磨いた『THE W』王者オダウエダが人気の理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

日本テレビと吉本興業が主催する女性芸人限定のお笑いコンテスト『女芸人No.1決定戦 THE W』は2017年に始まった。優勝者は賞金1000万円に加えて、日本テレビの多くの番組に出演する権利を得ることができて、売れっ子への道が開かれる。年々その注目度は高まっていて、出場者のレベルも上がっている。

昨年末の『THE W』で見事に優勝を果たしたのは、小田結希と植田紫帆の2人から成るオダウエダだった。映像と音を駆使した特殊な漫才を見せたAマッソ、正統派のコントを演じた天才ピアニストとの三つ巴の戦いを制して、アングラな芸風で知られる彼女たちが栄冠をつかんだ。

1本目のコントでは、焼鳥屋を訪れた植田が店員の小田にハツを注文をすると、味付けを「タレ、塩、シュウカツ」のどれにするか聞かれる。ワケもわからず「シュウカツ」を選ぶと、ハツのお面をかぶってリクルートスーツを着た女性が現れて、植田が「ハツの就活やー!」と叫ぶ。その後も珍妙なメニューが次々に登場する。2本目のコントでは、女性のストーカーをしていると怪しまれていた中年男性が、実はカニが大好きでカニのストーカーをしていることが明かされていた。どちらも、ぶっ飛んだ設定で突き進むナンセンスなコントだった。これこそが彼女たちの芸風である。

彼女たちは吉本興業の芸人養成所「NSC大阪」で出会った。植田は小中高と厳格なカトリックの学校に通っていたが、芸人を目指す夢が捨てられず、大学進学後にNSCに入った。一方の小田は、駆け込み寺に連れて行かれるほどの問題児だった時期もあったのだが、その後は引きこもりになり、憧れの人物であるナインティナインの岡村隆史に会うために芸人を目指した。

彼女たちは大阪で活動を始めたが、当時の大阪では正統派の漫才師が受け入れられる風潮が強く、彼女たちのアングラ感のあるコントはなかなか認められなかったため、東京に進出した。東京では地下ライブの自由な風土もあって、のびのびと芸を磨くことができた。そしてついに優勝という栄冠を手にした。

優勝後にはさまざまなバラエティ番組に出演している。芸人同士が恋人選びをする『ロンドンハーツ』の「ラブマゲドン」という企画では、植田が最後まで誰にも選ばれず取り残され、「1人で生きたらぁ!」という名言を放ったことでも話題になった。

女性芸人でここまで下ネタやバカバカしいネタに特化している人は珍しい。そのセンスには非凡なものがあるので、今後も独自の道を突き進んでいくのだろう。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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