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『トークィーンズ』『上田と女が吠える夜』……女性タレント中心のトーク番組がどんどん増えている理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

バラエティ番組の数あるジャンルの中でも、トーク番組は根強い人気がある。テレビの歴史が始まった頃から現在に至るまで、さまざまな種類のトーク番組が制作されてきた。

そんな中で、最近注目を集めているのが女性タレントを中心にしたトーク番組である。4月に始まったフジテレビの『トークィーンズ』と日本テレビの『上田と女が吠える夜』は、いずれも女性タレントが大勢集まって話すという形式の番組だ。

同じ時期に始まったということもあり、両者は何かと比較されることが多い。そもそもキャスティングにも共通点が多く、いとうあさこ、若槻千夏、ファーストサマーウイカなどは両方の番組に出演していた。

「女性タレントが大勢でトークをする」という点では同じだが、それぞれの番組の基本的なフォーマットには違いがある。

『トークィーンズ』と『上田と女が吠える夜』の違い

『トークィーンズ』では、女性たちがゲストの男性タレントを囲んで、その人を深く掘り下げるというのがメインテーマになっている。女性たちはあくまでも男性ゲストの話を聞く役割に徹している。指原莉乃といとうあさこが形式上は進行役を務めているが、MCとしての存在感がそこまで大きいわけではなく、女性タレント同士はほぼ対等のポジションをとっている。

一方、『上田と女が吠える夜』では、上田晋也がMCを務めていて、テーマに沿って女性タレントたちの話を聞いていくという内容になっている。『トークィーンズ』は、大勢の女性が1人の男性を囲むという構図に目新しさがあったが、こちらは形式としてはオーソドックスなひな壇トーク番組である。

トークの主題となるのは「女性が嫌いなタイプの女性」である。率直に言って、トーク番組のテーマとしてはやや既視感が強いが、女性陣に大久保佳代子、MEGUMIなどの実力者を配置しているため、見ごたえのある内容になっている。

こちらの番組では、MCの上田の存在感が大きい。女性タレントの話を的確に引き出しつつ、最後にツッコミをいれて笑いを取る。女性目線を大事にしている番組ではあるが、上田が男性目線でそこにコメントをすることで、バランスが取れているとも言える。

女性視聴者の共感を誘う番組作り

このような女性中心のトーク番組が増えている最大の理由は、テレビ業界が女性の視聴者を取り込みたいからだろう。女性は購買意欲が高く、広告効果があると考えられているため、テレビには常に求められている。

田中みな実、弘中綾香、山里亮太が出演するテレビ朝日の『あざとくて何が悪いの?』は、「あざとさ」という絶妙なテーマを見つけたことで、女性トーク番組の新境地を開拓して、安定した人気を得ている。ここに続けとばかりに、女性トーク番組が次々に乱立しているのだ。

女性タレントがあけすけに本音を語ったり、嫌いな人について話したりするのは、やり方を間違えるとギスギスした嫌な感じに見えてしまうことがある。だが、『トークィーンズ』や『上田と女が吠える夜』に出ているような人は、いずれも歴戦のトークの達人ばかりなので、和やかな雰囲気で笑いを交えて話を進めることができる。

どちらの番組も、女性タレントがたくさん出ているが、無理に寄せ集めたような感じは一切なく、むしろ今のバラエティ戦線におけるオールスターを集結させたような印象すらある。強力な布陣で臨むこれらの番組が順調に人気を得るようなことがあれば、女性トーク番組は今後もますます増えていくだろう。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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