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ゴージャスでセクシーなコスプレでも話題沸騰! 叶姉妹の知られざる素顔

ラリー遠田作家・お笑い評論家

コミケに足を運んだだけで「降臨」と呼ばれるのはこの2人ぐらいだろう。日本有数のセレブタレント・叶姉妹である。事件が起こったのは2016年の冬。叶姉妹が突然、自身のブログで冬コミに参加することを発表したのだ。

2人は『ジョジョの奇妙な冒険』のファンであり、その同人誌に興味を持って覗いてみることを決めたようだ。ゴージャスな2人に似つかわしくないコミケへの参加という事態に、オタク界隈は蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。ブログのコメントを通じて当日の心構えや持ち物などについてアドバイスされると、彼女たちは快くそれらを受け入れた。

叶姉妹がコミケに降臨

そして、コミケ当日、叶姉妹は本当に現れた。取り巻きの「グッドルッキング・ガイ」の姿はなく、コミケのスタッフに誘導され、いつもの装いで2人はフラッと訪れた。マンガの世界から抜け出してきたような異次元の容貌は、コミケという場には不思議なほど調和していた。

彼女たちの向かう先では、モーゼの十戒のように人混みが割けていったという伝説まで残した。そんな叶姉妹は、2017年の夏コミでは「ファビュラス叶組」「プレシャスM組」としてブースを出した。その後も、Instagramではアニメやゲームのキャラのコスプレをたびたび披露している。

コミケ降臨で話題を振りまいた叶姉妹だが、その存在はいまだに謎に包まれている。そもそもどんな仕事をしているのか? どうやって生計を立てているのか? 普段はどんな暮らしをしているのか? 2人はどういう関係なのか? 本人たちの著書や証言をもとにして、そのあたりを紐解いてみることにしよう。

叶恭子のセレブすぎる生い立ち

姉・叶恭子の生い立ちは、自伝本『蜜の味 ミレニアム・ミューズ』(幻冬舎)に詳しい。この本によると、恭子の父は輸入会社を経営していて、家庭は裕福だった。ただ、その生活ぶりは何もかも庶民とはかけ離れていた。

小学生の頃、恭子が遠足に行きたくないと駄々をこねたことがあった。わざわざ電車に乗って行くのなんて嫌だ、と言ったのだ。すると、父は恭子を運転手付きの真っ白のリンカーン・コンチネンタルに乗せて、目的地まで送り届けた。恭子が持たされていたのは母の手作り弁当ではなく、吉兆の三段重だった。もちろん、同級生からは好奇の目で見られ、恭子は重箱の中にあるおかずを友人たちに惜しみなく分け与えていった。

父は金の使い方をわきまえた人間だった。恭子にも、買い物をするときにはその商品の本質を見極めろ、と厳しく教えた。高価なものであればいいわけではない。上質なものにこそ価値がある。恭子は父を通して、お金とは何なのか、上質なものとはどういうものなのか、ということを少しずつ学んでいった。

また、父は複数の家庭を持ち、なかなか家には帰ってこない遊び人でもあった。それぞれの家庭に子供が何人もいたという。結婚というルールに縛られない父の生き方は、のちに複数の「グッドルッキング・ガイ」との自由恋愛を謳歌する恭子の生き方とも重なるものがある。

高校3年の頃、大阪のクラブで資産家の若い男性と知り合い、付き合うようになった。彼は恭子のために惜しみなく何度も大金をプレゼントした。透明のビニール袋に密封された百万円の札束10個(1千万円)を差し出した。恭子はそれを「ワンブロック」と呼んでいた。

「愛はお金じゃないのよ」と思いながらも、恭子は遠慮なく現金を受け取った。恭子の家には段ボールに入った「ブロック」が積み重なっていき、どんなに使っても減らなくなった。

その後、恭子はその資金を元手にして、宝石や貴金属を輸入する会社を立ち上げた。儲けるつもりは毛頭なく、自分が本当に欲しいと思うもの、興味があるものだけを輸入するというつもりで始めた。ところが、これが見事に当たり、会社は年商10億円を超えるほどに成長した。時はバブル景気の真っ直中。時代の波にも乗り、恭子のビジネスはさらに拡大していった。

こうして振り返ると、父の英才教育によって、恭子には確かな「眼」が備わっていたということがよくわかる。それは、物の価値を見極める眼であると同時に、人間の本質を見抜く眼でもある。これがあるからこそ、彼女は実業家としてもタレントとしても成功を収めることができたのだろう。

叶恭子の卓越したマネジメント能力

そんな恭子は90年代から、実の妹である晴栄、異父姉妹だという美香と共に「叶姉妹」というユニットとしてタレント活動を始めた。晴栄が結婚を機に脱退してからは2人組になり、そこから彼女たちの人気もますます加速していった。

叶姉妹は事務所に所属していない。彼女たちのマネージメントはすべて美香が担当している。美香は恭子の身のまわりの世話や、スケジュール管理などあらゆる雑務をこなしている。美香の部屋には6台のテレビがあり、全チャンネルを同時にチェックしている。新聞は主要4紙と英字新聞を毎日購読。

さらに、仕事で名刺をもらった際にはその裏にその人の特徴やその人から受けた印象、さらには似顔絵まで書き加え、一度会った人の顔は絶対に忘れないようにしている。まるで勤勉なエリート営業マンのようなエピソードだ。

共演者やスタッフへの気配りを欠かさない美香は、多くの人に信頼され、愛されている。大手事務所の後ろ盾もないまま彼女たちが芸能活動を続けていけるのは彼女のおかげだ。美香の不断の努力が「叶姉妹」という巨大プロジェクトを支えている礎になっているのは間違いない。

セレブでゴージャスな外見だけに惑わされてはいけない。彼女たちの本当の強みは、恭子の「本質を見抜く眼」と、美香の「圧倒的なビジネススキルと人柄の良さ」である。見た目が最強のセレブ姉妹は、ビジネスパーソンとしても最強なのだ。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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