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「囲碁将棋チャンネル」訴訟の大阪地裁判決文が公開されました

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:イメージマート)

放送された棋譜情報を使って配信を行っていたYouTuberが、著作権侵害により動画の削除請求を出されたのを不当であるとして、BS/CS放送事業者「囲碁将棋チャンネル」を訴えた件については既に書いていますが、その判決文が公開されました。それほど長くもなく、複雑でもないので気軽に読めます。

前回記事に加えて特に追加すべき情報はないのですが簡単にまとめます。被告(「囲碁将棋チャンネル」)がなぜか原告(YouTuber)の動画が著作権を侵害するものではないことを認めてしまっているため、削除申請が「虚偽の事実の告知」にあたるかという第1の争点は、ほぼ議論なく原告の請求が認められています。

「囲碁将棋チャンネル」側は、棋譜の著作物性という「パンドラの箱」を開けたくなかったのではという気もしますが、第2の争点(削除申請は原告の「営業上の利益」を侵害するか)において、原告は放送された情報にフリーライドしており守られるべき営業上の利益はないと主張したのに対して、裁判所は、「本件動画で利用された棋譜等の情報は、..有償で配信されたものとはいえ、公表された客観的事実であり、原則として自由利用の範疇に属する情報であると解される。」として、さらに、「『王将戦における棋譜利用ガイドライン』..は、棋譜の利用権等を王将戦主催者が独占的に有する旨規定するが、王将戦主催者が、原告を含めた被告の実況中継の閲覧者の関与なく一方的に定めたものであり、原告に対して法的拘束力を生じさせるものであるとはいえない。」(いずれも太字栗原)とし、公表された棋譜情報は自由利用可能との判断を示しました(これって間接的に棋譜の著作物性を否定していることになると思うのですが、どうなんでしょうか?)。

その他、原告の精神的苦痛による損害賠償が認められているなど、かなり原告寄りの判決となっており、やはり、著作権侵害を理由に削除申請しておいて、裁判で諸作権侵害を主張しないのは、裁判官の心証的によろしくなかったのではないかという気もします。

ところで、この裁判は大阪地裁なのですが、同じ「囲碁将棋チャンネル」を被告とした似たパターンの訴訟(原告も代理人も異なります)が東京地裁で進行中で、2月26日に判決言い渡し予定とのことです。同じような話になっているのか別の論点があるのか興味深いところです。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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