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トヨタが「色を変えられる車」の特許を取得

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:US22931773B1公報

トヨタ自動車が米国において色を変えられる車の特許を出願していたとのニュースがありました(USA TODAY参照記事)。

記事に出願番号くらい書いておいてくれてよいのにと思いましたが、調べると、US11931773B1でした。上記記事の書きぶりから、出願公開されただけかと思っていたら権利化されていました(出願公開のタイミングの前の特許化です)。出願日は2022年10月12日、発明の名称は”TUNABLE EXTERIOR PAINT COLOR”、出願人(権利者)は、トヨタの日本法人と米国法人です。米国以外への出願が行なわれているかどうかはもう少し経たないとわかりません。

上記記事を読むとユーザーが自由に車の色を変えられる特許のような書き方がしてありますが、スパイ映画にあるようにその場で自由に色を変えられるわけではなく、発明の名称に示されているように、車の塗装に特殊な成分を含め、ディーラーや工場で所定の光と熱加工を施すことで、色を変えられるという技術です。

色が変わる車というとBMWがCES 2023で公表したコンセプトカーが思い浮かびます(参照記事)。冒頭の記事でもBMWと比較するような書き方がされていました。しかし、BMWの方は、e-Inkのテクノロジをベースにした発明なので、トヨタの発明とは根本的に異なります。リアルタイムで色を変えられますが、発色や耐久性の面で克服すべき点は多いと思います。(事故や犯罪の状況で、運転中に色を変えられてしまってよいのかという道交法的な問題もあるかもしれません)。

さて、トヨタの発明は、塗料に特定の温度で色成分を放出するような発色素材(カプセルのようなもの)を含めておいて、初期状態の白色塗料に対して、熱放射を行なうことで発色させるというものです(この原理ですと、一度色を設定してしまうともう元には戻せないと思います)。この発色素材の具体的な成分や製法のようなことは書かれていません。それは、別特許にするのか、ノウハウとして社外秘扱いにするのか、そもそも、この特許がアイデアオンリーで実用化は未知なのかはわかりません。仮に実用化がまったく見えない状況で権利化したのだとしても、後になって実用化に耐える塗装素材が発明されたときに、この特許が基本特許として有効に機能し得るというメリットがあります。

過去にも似たようなアイデアはあってもよさそうですが、この特許に関しては基本的アイデアほぼそのまんまで権利化され、非常に範囲が広い特許になっています。請求項1の内容は以下のとおりです。

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弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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