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アップルのMRヘッドセット特許について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

ちょっと前までは”Next Big Thing”として注目の的だった「メタバース」(そして、それと無理矢理関連付けられたWeb 3.0)も、すっかりChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)の影に隠れてしまった感があります。

ChatGPTが(いろいろな問題をはらみつつも)現実的な価値を提供している中で、「メタバース」は具体的な価値を見せにくい状況にあり、普及率も当初予測されたほどではありません。特に、HMDを装着した際のユーザー体験があまり快適でない点が阻害要因の一つと言えるでしょう。私もかつてOculus GOを持っていましたが、最初のうちはおおっと思わせるものの、長期的に付けて楽しむには快適性に難ありで、すぐに手放してしまいました。

そのような中、「アップルのMRヘッドセットが6月登場か、クックCEO発言で真実味を帯びる最新情報まとめ」という記事を読みました。その中で、米国で最近登録された特許US11570417への言及がありましたので内容を調べてみました。既存技術のユーザー体験の革新という点ではアップルは実績がありますので、ちょっと期待しました。

この特許の出願日は2021年5月20日、発明の名称は、”Immersive video streaming using view-adaptive prefetching and buffer control”(視点調整を備えたプリフェッチとバッファー制御を使用した没入型ビデオストリーミング[栗原訳])です(なお、上記引用記事で、「バッファローコントロール」と書いてありますが、単なる誤記だと思われます)。登録日は2023年1月31日、米国以外での出願は確認されていません。

発明のポイントは、HMDのバッファーに動画をストリーミングする際に、ユーザーにとって重要な部分の解像度を高め、その他の部分の解像度を低めることで、ユーザーにとっての画質を大きく損なうことなく、転送データ量を削減することです。このユーザーにとっての重要な部分の推測方法がちょっとユニークです。ただし、元記事で言われているほど、画期的な話ではなく、どちらかという段階的改良に近いです(米国外に出願されていないことからもそれが窺えます)。ただ、アップル製品の一般的特徴として、「神は細部に宿る」的な細かい改良の組み合わせが全体的なユーザー体験の向上につながっていることが多いので、その点では興味深いです。

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弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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