「STAP特許出願」まだ粘るようです(追記あり)

素材提供:電広堂

追記:本審判請求は7月10日付けで取り下げとなっておりました(関連記事)。

今年の2月23日に「日本のSTAP特許出願に拒絶査定」という記事を書いています。2月20日付けでブリガムアンドウィミンズ病院(ハーバード大)を出願人とするいわゆる「STAP特許出願」(特願2015-509109)(正確に言えば、かつて「STAP特許出願と呼ばれていた特許出願」)に対する拒絶査定が通知されたという話でした。

記事内では、「拒絶査定となりましたが、まだ確定したわけではありません。制度上は、この後、4カ月以内に拒絶査定不服審判を請求できます」と書きましたが、予想通りというか何というかぎりぎりの6月20日付けで拒絶査定不服審判が請求されていました。一般に審判請求と同時に請求の範囲(クレーム)を補正するのが通常ですが、請求項1以外を全部削除するという大胆な補正が行なわれています。請求項1は、前記事のとおり、STAP細胞の本来の意味である多能性をという要素をカットしてその前段階の細胞塊を生成する方法を記載したものです。審判請求の理由に何と書いたかが気になるところですが、J-PlatPatで無料で見られる審査とは異なり審判については手続の細かい内容はネットで無料閲覧はできません。

【請求項1】細胞を、低pHストレスに供する工程を含む、Oct4を発現する細胞を含有する細胞塊を生成する方法であって、該低pHが、5.4~5.8のpHであり、且つ、pHの調整がATPを用いて行われることを特徴とする、方法。

手続上のちょっとややこしい話になりますが、不服審判請求時に請求の範囲が補正されると、前置審査という手続に入り、審査段階と同じ審査官(つまり、拒絶査定を出した審査官)が最初に特許性の判断をします。この手続の意味は、今までその出願を審査してきた審査官は出願の内容をよく理解しているので、最後の補正で特許性が得られたのであれば、審判官の手をわずらわせるまでもなく特許査定ができるという点にあります。

ところが、今回の場合は、もともと特許性がないとされた請求項1をそのまま残しているので拒絶査定の判断が覆るはずもなく、手続はそのまま審判官(の合議体)に渡るでしょう。ただ、このプロセスを経ることで審判が数カ月遅れますので、出願人としてはとにかく結論が確定するのを先延ばしにしたいのだと思われます。このクレームのままでは審判でも登録審決になることはないと思われますが、その後は、知財高裁に審決取消訴訟を提訴、さらに上告まですれば数年レベルで引っ張れます。また、ネット上ではまだ公開されていませんが、おそらく分割出願もしていると思われますのでこちらでも引っ張れます。

ちょっと出願人の意図が理解しがたいところがあるのですが、今後何らかの理由により再現実験がうまくいけば、拒絶理由を覆せるかもしれないという淡い期待を抱いてということなのかもしれません。(追記:twitter等で小保方さんとからめて感想を書いている方がいますが、もうこの件は彼女は関係なく、ハーバード大とおそらくはバカンティ教授の問題と思われます。)

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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