Yahoo!ニュース

有田焼のデッドストックにアーティストが命を吹き込む 循環型ブランド「GMKR」が渋谷パルコで限定販売

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
「GMKR」の大橋氏がアーティストと有田焼のデッドストックを復活させる 公式画像

“廃棄家具を分解し、芸術(文学・音楽etc.)と神様(偶然性・神秘)の力により再構築をするブランド”と銘打つのが、サーキュラーエコノミーの実現を目指す「GMKR−UnevenStructureFurniture-」(ゴミカラ−アンイーブン・ストラクチャー・ファニチャー)だ。メインアイテムは椅子で、6月21~27日まで、渋谷パルコの2階BRIDGEでポップアップストアを開催中だ。椅子に加えて、大沢伸一氏や田島一成氏などアーティストを起用して、デッドストックを復活させた有田焼の食器も限定販売している。

「GMKR」は元役者・舞台製作者で、唐十郎率いる唐組に所属していたこともある大橋秀吉氏が2021年にスタート。影響を受けた小説や古典、神話、ダンスを学んだNYの留学生活、チベットまで旅をした体験などをもとに創作活動を行っている。材料となる廃材は、インターネットサービスや廃棄物処理などを手がけるトライシクル(品川区)や、モノづくり支援やディスプレイや屋外広告などの企画・制作・施工などを手がける光伸プランニング(渋谷区)から提供を受けたり、ホテルやオフィスから出た廃品、リサイクルショップのジャンク品などを活用している。時には一流ブランドのディスプレイなどが手に入ることもあるという。メンターは、古着店の先駆け「デプト(DEPT)」の創業者で、現在はアーティストとして活動し、現在は世田谷区代沢でPREFAB gallery&thingsも手がける永井誠治氏だ。

大橋氏は「人間は、よりよく生きるために有形無形の様々なモノ・コトを世界中のあらゆる場所・時代で生み出してきた。『ゴミカラ』は、儀式のように、人間の歴史と創造力に敬意を表し、芸術と神様の力により再構築をする未完のプロダクトとして、一点一点ハンドメイドでモノづくりをしていく。ブランド名には、大量生産・マスプロダクションの対極であり、分類・カテゴライズできない不均一(uneven)なもの、という意味も込めた」と語る。

2021年秋に渋谷パルコで行ったポップアップストアの様子。著名な椅子が、様々なインスピレーションでリメイクされてアートチェアに生まれ変わっている   写真は公式
2021年秋に渋谷パルコで行ったポップアップストアの様子。著名な椅子が、様々なインスピレーションでリメイクされてアートチェアに生まれ変わっている   写真は公式

新たに、1775年に創業した有田外尾山・藤巻製陶のデッドストックに命を吹き込み、復活させる活動「ARITA CERAMIC DEAD STOCK &」にも着手した。

有田焼は、天草でとれた純国産の土を使用し全行程を職人の手作業で制作する、日本を代表する高品質の磁器だ。細分化・分業体制により、高い品質を追求するとともに、オーダーから納品までのタイムラグが発生するため、スムーズに受注ができるようにと、事前に生地と呼ばれる食器の型を準備しておくことが一般的だ。ただし、オーダーが入らなかったり、形が古いなどの理由で商品化されないデッドストックも発生してしまっていた。

それを知った大橋氏は、「様々な世界の第一線で活躍するアーティストたちの力を借りて、40年間倉庫に眠っていた有田焼のデッドストックを復活させたい」と、2021年末から少しずつプロジェクトを進めてきた。アーティスト自身が窯元を訪問したり、生地を選ぶところからスタート。「全作品を青磁をベースにグラフィックやメッセージをデザインしたのは、絵付けが一般的な有田において、初めて絵付けなしの青白磁で勝負をした挑戦者であり革命家である藤巻製陶に敬意を表したためだ」。

日本が世界に誇る400年の伝統を持つ有田焼で、『どことなく懐かしくトラディショナルな雰囲気を持つ40年前の食器』、そして『普段のジャンルとは異なり、どんなものを作るかわからない現代のアーティストが、子どものように新鮮な気持ちで取り組んだTRIP』により出来上がった食器を、ぜひ見て、手にとってもらいたい」と大橋氏。

有田焼の食器は、各アーティスト30個ずつ、「GMKR」のデザインも含めて、全180個の限定販売となる。「GMKR」と参加アーティスト制作の椅子約15脚も用意する。(昨秋行った渋谷パルコでのポップアップストアでは、椅子はほぼ完売していたので、商品の有無は要確認)。

<参加アーティスト>

大沢伸一:音楽家、作曲家、DJ、プロデューサー。国内外の様々なアーティストのプロデュース、リミックスを手がける他、広告音楽、空間音楽やサウンドトラックの制作、アナログレコードにフォーカスしたミュージックバーをプロデュースするなど幅広く活躍。 2017年にアルバム『何度でも新しく生まれる』でMONDO GROSSOを再始動。最新作『BIG WORLD』では坂本龍一、満島ひかりが参加した「IN THIS WORLD」など豪華アーティストとの変幻自在のコラボレーションが話題に。

田島一成:1968年 東京都生まれ。写真家・五味彬氏アシスタントを経て独立後、1989年からパリ、ニューヨークで活動。2002年から東京を拠点に、広告、ファッションを中心に、音楽系やTVコマーシャルにも活動の場を広げる。1997年American Photographie Annual(アメリカ写真年鑑)掲載。2007年、2013年ADC賞受賞。2021年個展「WITHERED FLOWERS」(Akiko Nagasawa Gallery)開催。

Kazane:Air Technician所属(リーダー)。幼少時からサッカーボールと音楽で育ち、20代になった今も尚、肌身離さずボールと音楽を身につけている。競技実績は世界大会ベスト4、全国大会では1位、世界各国で行われるイベントに参加しパフォーマンスを披露。2020年に発売されたサッカーゲーム”Street power football game”ではキャラクターの1人“Kazane”として参戦。感性豊かな映像編集とファッション、音楽に合わせたボール捌きを自身のInstagramなどで発信していて、世界中から注目される。

立花ハジメ:ミュージシャン、グラフィックデザイナー。テクノポップバンド「プラスチックス」のギター。「GMKR」のロゴデザインも手がけている。

Takako Noel:1991年東京生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション、Fashion Media and Communication科修了。帰国後、写真を軸としたVisual ArtistとしてLove and Peaceをコンセプトに活動中。写真へのペインティングや幻想的な世界観の作風で知られる。JRの広告やLUMINEやPARCOのウィンドウディスプレイディレクション、ファッション誌VOGUE JAPANやmadame Figaro Japon、Spurなどのエディトリアルの撮影、サイケデリックロックンロールバンド踊ってばかりの国ミュージックビデオ制作などを手がける。

<藤巻製陶とは>

有田400年・磁器発祥の地有田皿山十区七山の内、外尾山窯場にて、初代より鍋島藩許可釜焼名代として、1775年(安永4年)から磁器製作を開始。江戸時代は主に染付、大皿・鉢類を製作。明治・大正時代は鋼板染付の大皿、大鉢を製造。1903年(明治36年)、内国博覧会で六代目藤本巻助作「大白竹篭彫刻花瓶」で褒賞を受賞。昭和には青磁の皿鉢等を生産。現在は白磁・青白磁・結晶軸・白磁色絵等で「品格を大切に形状、施釉、焼成に心を込めて製作している」。

イベント期間:2022年6月21日~6月27日

会場:渋谷パルコ2F POP UP SPACE 「BRIDGE」など

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

松下久美の最近の記事