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H&MがPETAと提携しヴィーガンコレクション 野生の花がダウンの代替、ブドウ皮がヴィーガンレザーに

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
動物由来素材を使わない、野生の花から作られたヴィーガンダウンも登場  H&M公式

 スウェーデン発のファッションブランド「H&M」が、動物の倫理的な扱いを求める愛護団体PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)と提携し、動物由来の素材を一切使用しない、初のヴィーガンコレクションを発売する。

 よりサステナブルで革新的な技術や素材、デザインに焦点をあてることを目的としたInnovation Stories(イノベーション・ストーリーズ)の第3弾「Co-Exist Story Collection(コーイグジスト・ストーリー・コレクション)」で、"ファッションの未来は、スタイリッシュでアニマルフリー"をスローガンに、「人と動物たちが平等に共存する世界」を表現する。ファストファッションブランドのコレクションとしては初めて、PETAの正式な承認を受けている。

 注目素材は

▼サイエンスをベースにしたサステナブルブランド「Pangaia(パンガイア)」が開発した、ダウンやフェザーの替わりに使用する天然のワイルドフラワーから作られたセルロース系素材FLWRDWN

▼ワイン醸造時に出るブドウの皮や茎、種などをリサイクルしたヴィーガンレザー「VEGEA(ヴェジェア)」

▼漁網などの海洋ゴミや布地の端切れなどの廃棄物を原料とした再生ナイロン「ECONYL(エコニール)ファイバー」

▼ラバーフィッシャーマンズブーツに使用した天然ゴムYulex

"ファッションの未来は、スタイリッシュでアニマルフリー"をスローガンに、「人と動物たちが平等に共存する世界」を表現     写真はすべてH&M公式
"ファッションの未来は、スタイリッシュでアニマルフリー"をスローガンに、「人と動物たちが平等に共存する世界」を表現     写真はすべてH&M公式

 発売日は11月4日で、アニマルフレンドリーな44アイテムを日本では新宿店と公式オンラインストアで発売する。オンラインストアではInnovation Stories初のキッズウェア(135-170cm)も扱う。海外の一部ではヴィーガン用のメイクアップセットも発売する。キャンペーンビジュアルは、イギリスのノーフォークにあるヴィーガン経営のヒルサイド・アニマル・サンクチュアリで撮影した。PETAが承認する、救出された農場の動物たちを保護するイギリス最大の動物保護施設のひとつだ。

 PETAのローラ・シールズ=コーポレート・レスポンシビリティ・マネージャーは「PETAの活動の多くは、H&Mのような企業と良好な関係を築き、動物由来の素材の使用を止めようと努力することで達成されている」「ガチョウは一生の忠実な仲間であり、牛は堅実な友人であり、羊は遊び心があり愛情にあふれている。彼らはジャケットや靴、セーターではない」「今回、H&Mと協働して、地球と地球に住む動物たちに配慮した、スタイリッシュで素晴らしいヴィーガンデザインのコレクションを提供できることをとても嬉しく思う」とコメント。

 H&Mのアン=ソフィー・ヨハンソン=クリエイティブ・アドバイザーは「Co-Exist Story Collectionは、お客様に最先端のファッションを提供しながら、動物由来の素材に代わる革新的な素材を模索するという、H&Mの継続的な取り組みを象徴している。私たちはこのプロジェクトを通してPETAと積極的に対話を行い、彼らの貴重な活動をサポート出来ることを喜ばしく思っている」と述べた。

 また、H&Mのマリン・デュボア=シニアデザイナーは「このコレクションは都市生活の社会的な拠点を愛しながらも、週末には防水ラバーブーツを履いて自然の中に身を置くことを望むような、現代の都市生活者のためにデザインされた。多機能でファッション性の高いデザインと、動物由来の素材に代わるPETA認定のよりサステナブルな素材という、2つの情熱を融合できたことを誇りに思っている」と語る。

 H&Mは、1947年の創業当時から毛皮を使用しないファーフリーを貫いており、2018年にはPETAの意識向上キャンペーンなどを受けて、コレクションからモヘアの禁止を禁止してきた。ヴィーガン素材では、オレンジやブドウ、パイナップルなどの廃棄物や藻などを使ったアイテムを発売してきた。

 新素材開発では、H&Mの創業家が設立した非営利財団H&Mファウンデーション(基金)を通じて毎年行っているイノベーション・コンペティション「Global Change Award(グローバルチェンジアワード)」の存在も大きい。アクセンチュアとKTH王立工科大学の協力を得て2015年にスタートしたもので、環境に負荷の少ない革新的なアイディアを通じて、地球の天然資源を保護し、循環型ファッションを目指すというもの。受賞者には100万ユーロ(1億2,000万円相当)の助成金を配分するとともに、実用化に向けた支援も受けられるというもの。ブドウの廃棄物からできたVEGEAもアワードを受賞したアイデア・素材で、2020年から継続的に使用してきた。

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ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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