Yahoo!ニュース

ユニクロが西海岸1号店の閉店を決定 サンフランシスコのユニオンスクエア店 NY34丁目店も閉鎖済み

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
オープンを控えたユニオンスクエア店の仮囲いも話題に。2012年、筆者撮影

「ユニクロ」が、米国サンフランシスコのユニオンスクエア店(店舗面積820坪)を3月21日で閉店することを決めた。1月31日にはニューヨーク34丁目店(同1300坪)も閉鎖済みだ。東西海岸の大型店舗を相次いで閉める一方で、好立地への出店と、オンラインビジネスの強化に注力するという。

開店当日にはダイバーシティを体現するような、老若男女、様々な人種、約1000人が行列した 筆者撮影
開店当日にはダイバーシティを体現するような、老若男女、様々な人種、約1000人が行列した 筆者撮影

 ユニオンスクエア店は米国西海岸1号店として2012年に地下1階~地上2階の3層で出店。サンフランシスコ名物のケーブルカーが通るパウエルストリートに面した繁華街に位置。観光客や中華系移民も多い場所で、ユニクロをもともと知る人も多かったことや、大量の交通広告、アメフトの地元49ers(フォーティナイナーズ)の伝説的QB(クオーターバック)だったジョー・モンタナ氏を起用した宣伝なども後押しとなり、開店当日に1000人が行列したことでも話題に。ロサンゼルスなど「西海岸への出店の足がかりとなった」(同社)。シリコンバレーにも近いことから、デジタルサイネージを活用したバーチャル試着システムを取り入れるなど、リテールテックの開発拠点としても期待を寄せていた。

開店した2012年の時点でバーチャルフィッティングのデジタルサイネージを導入。リテールテックの開発拠点としても期待されていた 筆者撮影
開店した2012年の時点でバーチャルフィッティングのデジタルサイネージを導入。リテールテックの開発拠点としても期待されていた 筆者撮影

 一方、ニューヨークの34丁目店は2011年、グローバル旗艦店の五番街店のオープン直後に開店。2店舗合わせて1000人を雇用したことでも話題になった。エンパイアステートビルのほぼ向かいで、中級百貨店のメイシーズや「ビクトリアズシークレット」の旗艦店、北米で最も利用者が多いといわれたペン・ステーションにも近く、「マンハッタンのショッピングストリートにあり、ニューヨーク市民に気軽に立ち寄っていただける店舗だった」(同社)と振り返る。

1月末に閉店したニューヨークの34丁目店舗。2011年の開店当時の写真。グローバルチェーンがひしめくショッピングエリアで「ビクトリアズシークレット」や「アマゾンブックス」も並びに位置していた 筆者撮影
1月末に閉店したニューヨークの34丁目店舗。2011年の開店当時の写真。グローバルチェーンがひしめくショッピングエリアで「ビクトリアズシークレット」や「アマゾンブックス」も並びに位置していた 筆者撮影

 しかし、「コロナウイルスの影響でサンフランシスコやニューヨークの都心部の購買動向が変化していることなど、様々な要因を考慮して閉店を決定した」(同社)。

 ニューヨーク・マンハッタンではコロナ禍前から「ラルフローレン」や「ギャップ」、百貨店の「ロード&テイラー」が五番街の旗艦店をクローズ。「バーニーズ ニューヨーク」も閉鎖するなど、高い家賃が足かせとなって撤退が相次いでいた。

 サンフランシスコでは、1969年に創業し本社を構えてきた「ギャップ」が昨年8月、「ユニクロ」と同じユニオンスクエア地区のマーケットストリートにある旗艦店を含む複数店舗を閉鎖。「ユニクロ」のはす向かいにあった「H&M」も10月に西海岸最大店舗を閉じるなど、コロナ禍の影響を受けてのものと言える。

サンフランシスコを拠点とするギャップも昨年、ユニオンスクエア旗艦店を閉店している 筆者撮影
サンフランシスコを拠点とするギャップも昨年、ユニオンスクエア旗艦店を閉店している 筆者撮影

 「ユニクロ」の米国事業は2020年8月期、3~6月にかけてほぼすべての店舗が臨時休業し、それ以降も外出制限や入場規制などの影響で客数が減り、既存店売上高は大幅な減収に。赤字幅も大幅に拡大した。ただし、デジタルマーケティングを強化したことで、ECの売上高は第4四半期(6~8月)に7割伸び、通期でも約2割の増収に。EC化率は約40%まで高まった。今期に入っても同様の傾向が続いている。

 「弊社の米国市場へのコミットメントに変わりはない」「米国だけでなく全世界で、さまざまな観点から複合的に考え、出退店を決めている」「グローバルな戦略として、引き続き、立地が良い場所への出店と、オンラインビジネスの拡大に注力していく。これからも、お客さまの暮らしに寄り添い、最高のお買い物体験を提供していきたい」と同社。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

松下久美の最近の記事