ユニクロの中国事業が売上高5000億円へ 6つの好調要因とは?

決算会見に登壇した潘寧グレーターチャイナCEO。右は柳井正会長兼社長。筆者撮影

 ファーストリテイリングの2019年8月期第2四半期決算は、売上高がわずか半年で809億円増え、1兆2676億円(前年同期比6.8%増)、営業利益が1729億円(同1.4%増)、当期利益1140億円(同9.5%増)となった。海外ユニクロ事業は売上高が725億円増え、5800億円(同14.3%増)、国内ユニクロ事業は暖冬の影響もあり23億円減り4913億円(同0.5%減)、GU(ジーユー)は113億円増え、1171億円(同10.7%増)だった。

 とくに半年間で三陽商会の年間売上高(590億円)を軽々と超える、725億円の売上げを積み増し、営業利益884億円(同9.6%増)を稼ぎ出した海外ユニクロ事業の好調をけん引するのは、中国を中心としたグレーターチャイナだ。2月末の店舗数は中国で673店舗、香港28店舗、台湾67店舗と合わせて768店舗に拡大。上期は売上げ、営業利益ともに2ケタ増となり、2019年8月期通期には、売上高5000億円、営業利益850億円の達成が見込まれる。EC化率も日本の9.9%に対して中国事業では20%と先行している。

 日本のファッション小売り企業で中国で現在成功しているのは、「ユニクロ」と良品計画が手がける「無印良品」だけだといわれている。11日に都内で行った決算会見に、柳井正会長兼社長や岡崎健CFOとともに登壇した、グループ上席執行役員の潘寧グレーターチャイナCEOが語った「高成長が続くグレーターチャイナの現状と課題」から、好調理由や今後のポテンシャルを探ってみたい。

 業績好調の要因は6つある。

 北京の高校を卒業後、中国人留学生として来日し、大学卒業後、1995年にファーストリテイリングに入社した潘CEOは、販売員、店長、店舗運営部、生産、M&Aなどを経て、2005年に香港、続いて中国事業の責任者に就任。以来、グレーターチャイナで陣頭指揮を執っている。

 そんな潘CEOが考える好調要因は、6つある。

  1つ目は、「ユニクロのブランドビルディングの成功」。

  2つ目は、「デジタルマーケティングの拡大と進化」。

  3つ目は、「他社に真似できないユニクロの商品」。

  4つ目は、「出店戦略の成功」。

  5つ目は、「EC事業の拡大」。

  6つ目は、「強いチームワーク経営・全員経営」だ。

1:「ユニクロのブランドビルディングの成功」

 グレーターチャイナで事業を始めた当初から、柳井から強く指示を受け、ブランドビルディング活動、PR活動を徹底的に行うように日々努力してきたと潘CEO。結果的にユニクロは2018年度、グレーターチャイナのさまざまなブランドランキングで1位を獲得している。

 *「Campain Magazine」が選ぶ「2018年 グレーターチャイナ・ブランド・オブ・ザ・イヤー」

 *「第一財経週刊」の「ゴールデン・ブランド」に7年連続選出

 *「2018 中国著名ブランド・デジタルマーケティング・バリューランキング」で4年連続1位を獲得

 現在はお客さまからの圧倒的な支持と、高い認知度を得られている。その中で特にユニクロが提唱する「LifeWear」のコンセプトがお客さまに浸透し、高品質で付加価値の高い日常着として高く評価され、これが来店客数や購買率の増加につながっているという。

2:「デジタルマーケティングの拡大と進化」

 SNSによるマーケティングが成功している。とくに新商品や新しいイベントをSNS上で積極的に配信することで集客に大きく寄与している。とくに中国大陸ではWeChat(ウィーチャット)やWeibo(ウェイボー)などのSNSプラットフォーム上のマーケティングによって、将来のお客さまとなる若年層の新規顧客が大幅に増加している。ファッション業界でも一般消費者に対しても大きな影響力を持つKOL(キー・オピニオン・リーダー=日本でいうところのインフルエンサー)の獲得に成功している。KOLが発信した情報を見て商品を購入し、お客さま自身のSNSで新商品のニュースや着こなしなどについて発信されるなど、マーケティング効果がより高まっている。

3:「他社にまねできないユニクロの商品」

 高品質、高機能性素材とともに、ファッション性が評価されたユニクロのコア商品がお客さまから高い評価を得ている。ユニクロを代表する商品がいま中国の生活者の日々の生活に欠かせない存在になってきた。

  *フリース *カシミヤ *ウルトラストレッチジーンズ *エクストラファインメリノ 

  *ヒートテック *ウルトラライトダウン *スーパーノンアイロンシャツ 

  *エアリズム *ドライストレッチパンツ *スーピマコットンTシャツ等

 ユニークなコンテンツを発信し続ける「UT」の存在も、若者の間で大人気だ。漫画やキャラクター、浮世絵など日本発のコンテンツや、グローバル企業とのコラボレーションや、世界的アーティストの作品など、グローバルなコンテンツを発信したことで人気を集めている。

Tシャツをキャンバスにしてアニメやアート、企業コラボなどのデザインコンテンツを載せて展開する「UT」が中国の若者層にもうけている。写真はファーストリテイリングの資料より
Tシャツをキャンバスにしてアニメやアート、企業コラボなどのデザインコンテンツを載せて展開する「UT」が中国の若者層にもうけている。写真はファーストリテイリングの資料より

4:「出店戦略の成功」

 事業をスタートした当初から、購買力、発信力の強い1級都市(北京、上海、広州、深セン)を中心に出店し、1級都市での店舗数は200店舗となり、中国大陸の店舗数の約3割を占める。2級都市、3級都市も成長ポテンシャルが高いと考えている。今後は1級都市のように攻めていきたい。年間100店舗前後の出店を今後も継続し、出店の数のみならず、1店舗1店舗丁寧に、「個店経営」をし、収益を高めていく。「赤字店舗ゼロ」を目指す、「ローコスト経営」も徹底している。上期は投資額が高かったグローバル旗艦店1店舗のみ既存店で赤字だったが、その他の既存店はすべて黒字化している。グレーターチャイナ全体では2021年度に1000店舗を突破する予定だ。

5:「EC事業の拡大」

 中国は非常にEC事業が発達しており、上期のEC売上高構成比は約20%、前年同期比3割増収を達成している。2021年8月期には売上高構成比が3割を超える計画をしている。グローバルで推進している「有明プロジェクト」の実践も始まっている。O2O(オンライン・トゥ・オフライン)による店舗とオンラインが融合した新しい小売りのスタイルが確立しつつある。とくに国土が広い中国大陸では、店舗がECの倉庫の役割を担い、店舗在庫をオーダーに引き当てながら、効率よくビジネスを展開し、購入された商品をいち早く届けられるようにしていく。

EC向けの在庫・配送イメージ図。ファーストリテイリングの説明資料より
EC向けの在庫・配送イメージ図。ファーストリテイリングの説明資料より

6:「強いチームワーク経営・全員経営」

 競争が厳しい中国市場で生き残るためには、常に緊張感を持つ強いチームワークの経営体制を確立してきた。経営人材の育成としくみを強化し、経営陣が日常のコミュニケーションを通じて社員一人一人に明確に経営方針を伝え、徹底した従業員教育を実施している。現地だけでなく、グローバル本部との強い協働体制を組んでおり、成功事例をお互いに学び合うこと、チームワークでの経営を実践することによって、グレーターチャイナの商売を成功に導いていく。

 今後の課題は、4つある。

 1つ目は、「経営者人材の育成」だ。グレーターチャイナのみならず、今後、グローバルの舞台で活躍する経営者を継続的に輩出できるようにする。

 2つ目は、「若年層のお客さまの開拓」で、とくに近年、デジタルを活用した若年層の積極的なマーケティングが功を奏している。引き続き強化していく。キッズ商品も強化する。中国では一人っ子政策がなくなることもあり、今後のポテンシャルは大きい。キッズ商品でも業界ナンバーワンを目指す。

 3つ目は、「2級、3級都市での商売の拡大」だ。地方での出店拡大とマーケティング強化により、ユニクロの知名度を上げていく。中国服装協会の発表では2018年度、衣料品の中国内需市場規模は3.08億元、日本円にすると約50兆円もある(日本の衣料品市場規模は約10億円といわれている)。しかも、年率7.3%で成長している。ポテンシャルのある市場をきちんとつかみ、今後も事業拡大できるようにしていく。

 4つ目は、「営業利益率20%の達成」だ。値引きに頼らない商売の実施、経費削減を徹底しローコスト経営を意識する。また、RFID(非接触型電子タグ)などのデジタルツールを活用することで、店舗経営の効率性の向上や、店頭欠品防止による収益改善をきちんと行っていく。

 これらによって、「ユニクロは世界中のお客さまに喜ばれる日常生活に欠かせないLifeWearを提供し、アジアを代表するグローバルブランドへと経営努力をしていきたい」と潘CEO。グレーターチャイナで売上高1兆円という夢の達成もそう遠くないかもしれない。

柳井社長「中国衣料品市場はけして減速しない」

 柳井社長は、巷間いわれている中国の景気減速に対して、「アパレルの消費は減速することはないと思う。50兆円という年間の衣服需要があるし、われわれはまだ1000店舗にも達していない。13億人の人口がいるという事実がある。その人たちが生活の向上を続けていよいよ中間層になり、実際の購買層になっていく。生産だけでなく購買マーケットとしても世界最大のマーケットになっていくと思う」と説明。今後、2級都市、3級都市への出店も強化するが、「それぞれの都市に何百万人もの人口がいて、しかも中間層もたくさんいる」とし、あらためて、「中国の衣料品市場はけして減速はない」と繰り返した。

 潘CEOは、今後出店を強化する2級都市、3級都市の出店について、「すでに進出しているが、たとえば、上海の店と、はるかに離れた西南地域の都市にある店でも、中心部の店の売上げはほぼ同じで、全然負けないぐらいだ。ユニクロは丁寧に1店舗1店舗を個店経営しているので、各店舗の業績を常に改善できるようになっている。国内の大手デベロッパーから、テナントとしてナンバーワンのブランドと見てくださり、最大規模・最高立地の出店依頼を受けるようになっている。われわれも積極的に出店できるように組んでいる。その中でパートナーシップをしっかりと組んでいき、われわれの全国出店のネットワークの充実を図っていきたい」と説明。

 さらに、「ECビジネスはユニクロはすごく早期から力を入れており、常に新しいことを挑戦しつつ、O2Oでリアル店舗とバーチャルとを融合し、常に連動するような集客や売上げをとる施策をとっている。W11(11月11日の「独身の日」)の大きなeコマースのイベントも、服の小売りの全国ナンバーワンの売上げをとっている(昨年の「W11」では、ユニクロは開始後35秒で売上高1億元(約17億円)を達成。出店するTモール(天猫)全体でも売上高トップ5に入った)。これからの成長ポテンシャルは大きいと確信をもって進めていきたい」と意気込む。