市場対日銀の攻防再び、ドル円は145円に一時接近、債券先物は中心限月移行後に注目か
6月のヘッジファンドと日銀の攻防戦は、日銀が禁じ手ともいえる債券先物のチーペストを対象とした連続指し値オペを実施したこともあり、日銀が勝利した、かにみえた。
しかし、それよりも日銀は神風に助けられた側面が大きかった。米国の長期金利が3.5%あたりから反転低下したためである。米債が買い戻されたことで、日本国債売りも仕掛けづらくなったのである。これによって日米金利差を意識したドル買い円売りも収まり、市場と日銀の攻防戦はいったん幕を閉じた。
しかし、禁じ手となる債券先物のチーペストを対象とした連続指し値オペを実施したことで、債券市場の価格形成機能はゆがめられた。さらに債券先物という日本の債券市場のベンチマークまでも抑えられたことで、債券市場の流動性がさらに低下した。
米長期金利の低下は結局、一時的なものとなった。ジャクソンホールでの、パウエルFRB議長による短い講演がその流れを変えた。バウエル議長はインフレの抑制について「やり遂げるまでやり続けなければならない」と利上げ継続を明らかにした。これに対して、日銀の黒田総裁は持続的な金融緩和を行う以外に選択肢はないと語った。
6日のオーストラリア準備銀行による0.5%の利上げをきっかけに、欧米の中央銀行が今後も積極的に利上げを行うとの認識を強め、米10年債利回りは3.35%まで上昇してきた。英国の10年債利回りも一時3.147%と2014年の水準3.092%を上回り、2011年7月以来の高水準を付けてきた。
パウエル発言を受けての米利上げ継続による米長期金利の再上昇と日銀の緩和継続姿勢によって、ドル円は9月に入り140円を突破してきた。7日のロンドン市場で144円99銭と145円に接近した。
日本の債券市場では超長期債を主体に再び売り圧力を強めてきている。12日に取引最終日を迎える債券先物9月限は7日に一時、139円を割り込んできた。10年債利回りは0.245%と日銀の最終防衛ラインの0.250%に接近している。
市場対日銀の攻防が再び開始された。ドル円の急ピッチな上昇もその一環であろう。
日銀は今度中心限月となる12月限のチーペストも指し値オペに加えている。しかし、あくまでチーペストは12月限の取引最終日(12月13日)に残った建玉での現引き現渡しの際の最割安銘柄である。それまでは債券先物とチーペストが完全に連動する必然性は理論的にはあっても現実的にはない。
債券先物の中心限月は、早ければ本日8日にも実質的に12月限に移行するとみられる。
7日に日銀は通常の国債買いオペで対象5年超10年以下を5000億円から5500億円に増額するという手段を講じた。これをみても今回も徹底抗戦の構えだが、抗えば抗うほど異常緩和の姿勢を硬化させかねない。それがさらに円安を進行させかねないという悪循環を招く懸念もある。そして、二度目も神風が吹くという保証はない。