日銀は慎重かつ大胆に国債買入の減額を進める可能性が出てきた。7月に利上げの可能性も
日銀は14日の金融政策決定会合で全員一致で現状の金融政策の維持を決定した。さらに次回の7月の決定会合で市場参加者の意見を確認の上、今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定するとした。
今回の決定会合で減額を決めるとの見方も強かったことで、これは時間稼ぎの先送りではないかとの見方も出ていた。日銀の正常化は遅れるとの認識により、円安が進行し158円台を付けてきた。しかし、結果として先送りにもみえるが、実はそうではない可能性がある。
会合後の植田総裁の会見などから考慮して、今回の決定は国債買入の減額を本格的に行うためのものとの見方ができるのではなかろうか。植田総裁は減額規模について「減額する以上相応の規模になると考えている」と述べていた。
「債券市場参加者会合」を通じて、市場参加者の意向も確認した上で、今後1~2年程度の具体的な減額計画を決めることになる。規模については想定のものがあると推測はされるが、市場参加者との意見交換を経た上で決定されることになりそうである。
とはいえある程度の規模を想定する必要もある。ひとつ参考となりそうなのが、2013年4月の量的・質的緩和前の日銀による国債買入の状況となるか。日銀のサイトにあったオペレーション(2013年3月)を確認すると利付国債の月額買入規模は1兆1000億円となっていた。
オペレーション(2013年3月)
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/ope/m_release/2013/ope1303.pdf
現在の月額6兆円規模の国債買入を異次元緩和前の水準に戻せるのかどうか。まさにこれは市場参加者の意向も踏まえた上で決める必要もあるかもしれない。国債発行額との兼ね合いなども当然出てこよう。
ただし、植田総裁のいうところの「相応の規模」は数兆円単位となることが予想され、月額買入を1兆円程度まで、とはいえずとも現在の半分以下にする可能性は当然ある。もし仮に1兆円程度まで減額しても、それを投資家が補完できるのであれば問題はなかろう。
いずれにしても相応の金額での減額でも市場に予見性を与えることで、それによる長期金利の急騰を招くようなことのないように配慮したものとの見方もできる。5月13日に5年超10年国債の買入減額を行ったことがサプライズとなり、長期金利が跳ね上がった。これも踏まえて、予見性を持たせることでより慎重かつ大胆に国債買入減額を進めたい意向なのではなかろうか。
さらに「利上げ」と「国債買入減額」は切り離して考える必要がある。ともに金融政策の正常化といえるが、利上げは物価に応じたものであったとしても、国債の買入減額の目的は量的引き締めでなどではなく、あくまで過剰な国債買入を削減することで債券市場の機能回復が目的となろう。公表文にも、金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるようにするためとあった。
7月に市場参加者との協議の上で、国債減額のスケジュールが決まれば、それに向けて日銀は淡々と国債買入の削減を行う。利上げについては物価や景気の情勢を確認の上、その会合毎に決める。これは総裁が会見であらためて示していたものでもある。
つまり7月の金融政策決定会合では、相応の国債買入の減額とともに、金融政策の変更として「利上げ」も決定される可能性が出てきた。