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収入印紙ではない収入証紙とは何か

久保田博幸金融アナリスト
(提供:イメージマート)

 徳島県が2026年秋をめどに、縦25・5ミリ、横36ミリの小さな「紙切れ」の発行を廃止すると6月11日に毎日新聞が報じた。この紙切れとは、県が手数料などを徴収する際、書類に貼るよう求めている「収入証紙」のことである。

 私の知識不足をあらためて披露してしまうことになるが、「収入印紙」は聞いたことがあるが、「収入証紙」と言う言葉は初めて聞いた気がする。

 「収入証紙」とは券の一種であり、地方公共団体が地方自治法と条例に基づいて発行し、自治体に対し使用料や手数料の納付を行うため金銭の支払いを証明し貼付する証票である。東京都や広島県など一部自治体では廃止されている。

 私の住む茨城県でも収入証紙はまだ使われており、何かの機会に使った可能性があるが、その際にはたぶん私は「収入印紙」と勘違いしていた可能性がある。

 収入印紙とは租税や手数料、その他の収納金微収のために政府が発行する証票となる。つまり政府に払う税金や手数料は収入印紙を使うが、収める先が地方公共団体の場合は「収入証紙」となる。

 収入証紙はたとえば、運転免許証の更新や旅券(パスポート)発行の際などに使われるそうで、私も絶対に使っていた。

 収入証紙は現金の管理をなくすことで職員の負担を軽減するのも狙いで、今も徳島県や茨城県など40道県が発行しているそうである。

 徳島県では、10年旅券の発行手数料は1万6000円だが、国に納める分は1万4000円分の収入印紙を購入し、県の分は2000円分の収入証紙を貼り付けるといった具合になっているとか。県立高校入試の受検料(全日制で2200円)も証紙で納める必要がある。毎年、印刷代などのコストが約5000万円かかるという(11日付毎日新聞)。

 全国的には、10年3月限りで収入証紙の発行をやめた東京都を皮切りに、すでに大阪府や広島県、鳥取県など計7都府県が廃止している。

 パスポートの場合、2018年9月に収入証紙の販売を終了した大阪府では、発行手数料を現金で納めることになった。また、岡山県などでは、発行される納付書を金融機関などに持参して納める。

 鳥取県の場合、納付書のほか、電子マネーやクレジットカードを使った納付も選べる。ただ、いずれも国の手数料分の収入印紙を貼る必要はあるそうである。

 できれば電子マネーやクレジットカードを使った納付に統一するようなことは出来ないのであろうか。このキャッシュレス時代、さらにできれば政府の発行する「収入印紙」も廃止の方向に持って行くことはできないのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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