アベノミクスの修正は必須
毎日新聞社は参院選の全候補者545人に重要政策に関するアンケートを実施し、4日正午までに526人から回答を得た。安倍晋三元首相が始め、菅義偉前首相、岸田文雄首相と引き継いできた経済政策「アベノミクス」について、計80%が「修正」「見直し」を求めた。物価高や格差拡大を背景に、アベノミクスの弊害が多くの候補者に意識された模様だ(5日付毎日新聞)。
アベノミクスの「継続」が15%、「修正」が34%、「見直し」が47%となっていた。自民党ではまだ「継続」を求める声も多いようであるが、これは安倍元首相の影響力が大きいことを示していると思われる。
そもそもアベノミクスと呼ばれたものはいわゆるリフレ派が主張していたことを採り入れたものである。日銀が積極的な金融緩和を行えば、物価目標の2%は達成できるとしたものである。
結果として2%の物価目標が達成されたのは、2013年4月の異次元緩和と呼ばれた量的質的緩和を決定してから、9年後の2022年4月の消費者物価指数においてであった。
しかし、2022年4月の消費者物価指数(除く生鮮)が前年同月比2%を超えても、これはコストプッシュ型の物価上昇であり、日銀が意図したものではないという理由で、異次元緩和の解除はなかった。
それどころか、欧米の長期金利の上昇などを背景に日本の長期金利も上昇し、債券先物にはヘッジファンドなどの仕掛け売りが入ったことで、あろうことか10年国債の指し値オペを連続して行うようになった、それにチーペストと呼ばれる債券先物に連動する10年国債の356回までも指し値オペによって利回りを押さえ付けようとしたのである。
その結果、6月は日銀が新規で発行された利付国債の金額以上の国債を買い入れるという異常な状況となった。これは財政ファイナンスにみえるとともに、金融緩和の強化といった格好ともなる。
日銀が正常化に向けた修正を頑なに拒否した結果、円安も進行し、これにより輸入物価を通じて我々の生活用品などの値上げをさらに加速させる結果となりつつある。
長期金利を0.25%に押さえ付けて、賃金が上がり、日銀の求める物価目標が達成できる保証はまったくない。そもそも異次元緩和を続けていた9年間の総括をすれば、金融緩和で物価を引き上げることは難しいことも明らかであろう。
日本の債券市場では弊害にしかならないイールドカーブコントロールを排し、マイナス金利政策も廃止して正常な金利形成を行えるようにすることが、いまの日銀に求められるものである。それはつまりアベノミクスの修正ということになる。