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四半期ベースで過去最高となる米国債発行

久保田博幸金融アナリスト
ムニューシン財務長官(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 米財務省は5日、過去最高となる1120億ドル(約11兆8200億円)相当を四半期定例入札で発行すると発表した(6日のブルームバーグ)。

 米財務省は今年の初め、過去最大規模の景気対策の資金を賄うため、利払いのないTビルの発行を急増させていた。  

 米国の市場性国債の種類には、財務省証券(Treasury Bills、Tビル)と呼ばれる1年未満の割引債と、中期国債(Treasury Notes)と呼ばれる償還期限が1年超10年以下の利付債(2年・3年・5年・7年・10年)、そして長期国債(Treasury Bonds)と呼ばれる償還期限が10年超の利付債(30年)がある。

 つまりこれまでは短期債で景気対策の資金を賄っていたが、それでは間に合わなくなり、より期間の長い国債を増発させることにしたようである。

 日本でも今年度の第二次補正予算において過去最大規模の国債増発を決定し、7月からカレンダーベースの国債発行額が急増している。

 FRBやECBさらに日銀などによる強力な金融緩和策も手伝い、日米欧の国債利回りは低位で安定している。安定どころか、5日に米5年債利回りは過去最低を更新していた。日本でも10年債利回りはゼロ%近くとなっている。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大とその感染防止策によって、経済の動きにブレーキが掛かり、経済指標は過去にないような悪化を示し、物価も下方圧力を強めた。これも国債の利回りの低下圧力になる。また、リスク回避の動きによって国債が買われていた面もある。

 現状、国債利回りの急上昇の可能性は薄い。しかし、日本ばかりでなく世界的に国債発行残高がこれまで以上に膨れ上がってきている事態は認識しておく必要があろう。今が非常事態であることは確かであり、それに政府が対応せざるを得ないことも確かである。しかし、その分、政府債務も膨張し静かに債務リスクが高まっている。これは本来、国債の利回りの動きによって、そのリスクが顕在化される。しかし、現状の国債は鉱山のカナリアとしての機能を失っている点にも注意が必要となる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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