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長期金利の先行き、目先は上昇圧力を強めるか

久保田博幸金融アナリスト

 10年債利回りは現在、ゼロ%近辺にいる。

 4月7日からの緊急事態宣言により、市場参加者も在宅勤務を余儀なくされ、その分流動性は低下していた。市場参加者にとってテレワークでの売買はかなり困難となる。取引先との取引には守秘義務が発生する。本店のディーリングルームでなければ取引所などとの直接端末がない。入ってくる情報の絶対量がテレワークでは不足する。そもそもポジションを自宅で持つなどするとリスク管理に問題も生じる。

 ということで、ここにきて全面的に緊急事態宣言が解除され、市場参加者もそろってくることが予想される。4月以降、ほぼ横ばいとなっていた債券市場がここから動意をみせるのか。みせるとすればどちらに動くのか。

 27日に第二次補正予算が閣議決定された。それにともなってあらたな国債発行計画が発表されたが、増発額は想定以上に大きくなっていた。それでも日銀の国債買い入れやイールドカーブ操作もあり、需給を意識したある程度の上昇は抑えられよう。しかし、日本だけではなく世界的に国債の発行圧力が強まっているだけに、長期金利には上昇圧力が掛かりやすい。

 ここにきて株式市場は回復基調を強めていることも金利には上昇圧力となりやすい。先行きの不透明感は極めて強いものの、市場は先を読んでコロナ後の景気回復期待を織り込んだ動きとなっている。いわゆるリスクオンによって株は買われ、債券は売られやすい(長期金利は上がりやすい)。

 そしてこのリスクオンの動きや、売られすぎの反動もあって原油価格がしっかりしつつあることも、金利の抑制圧力の後退となる。原油価格は特に日本では物価の低下要因となるが、原油価格が多少なり回復すればいわゆるデフレ圧力も後退する。

 以上のことから長期金利には目先、上昇圧力が掛かりやすいとみている。それでも日銀の国債買い入れ等もあって10年債利回りでプラス0.1%あたりまでがせいぜいか。ただし、世界的に国の債務が問題視されてくるとなれば、地合が急変する恐れもあるため注意しておきたい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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