原油先物は戻り基調、65ドルあたりをうかがう動きに
原油価格のベンチマークともいえるニューヨーク商業取引所のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物の価格の動きを振り返ってみたい。
WTIのチャートをみると今年の4月あたりまで上昇トレンドを形成していた。これは米株価指数も同様でありナスダックは最高値を更新した。日経平均も4月24日あたりまで上昇基調となっていた。
WTIの上昇の背景は、株価の上昇にもみられたように世界的な景気回復が背景にあったと思われる。しかし5月に入り、米国のトランプ大統領が中国との協議は遅すぎるとして、2000億ドル分の中国製品に課す関税を10日から25%に引き上げると表明したあたりから、この上昇トレンドが崩れてきた。13日に中国は米国からの600億ドル分の輸入品への追加関税を5~25%に引き上げると発表したことで、米中の貿易戦争の激化が意識された。
16日にはトランプ政権がファーウェイを標的とした引き締め措置を発表した。ファーウェイとの取引を原則禁じる米政府の制裁措置に対応し、グーグルがアンドロイドの供給を停止する見通しと伝わったことなどから、同措置が米中貿易摩擦の激化につながるとの懸念が強まった。
中国当局の報道官が、米国が貿易交渉を続けたいなら、誤った措置を真摯にただすべきだ、などと述べたと伝わった。米中貿易交渉は行き詰まるとの懸念が強まり、23日の原油先物は大きく下落し、WTI先物7月限は3.51ドルもの下げとなって57.91ドルと節目とされる60ドルを割り込んだ。米国とメキシコの貿易摩擦も警戒され、30日のWTI先物7月限は2.22ドル安の56.59ドルとなった。31日も大幅続落となり、WTI先物7月限は3.09ドル安の53.50ドルに。
この原油先物が下げ止まるのが、6月の初旬から中旬にかけてとなった。米国のダウ平均も6月3日あたりから回復基調となり、原油先物は戻りが鈍かったが、こちらも次第に戻り基調となってきた。米国がメキシコ製品への関税発動を見送ったことや、FRBの利下げ観測、さらにはECBも緩和策を検討かとの報道などが買い戻しの要因となった。
WTIは6月下旬に60ドル近くまで戻ったところでもみあいとなった。WTIのチャートからは三角持ち合いとなりつつあり、60ドル近辺がちょうど居所としては良いところとなる。ここからどちらに向かうのか。米株価指数などの動きを見る限り、いったん戻りを試す展開が予想され、原油先物も65ドルあたりをうかがう動きとなるのではと予想される。