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藤井聡太竜王・名人5度目の優勝なるか――第17回朝日杯将棋オープン戦準決勝、決勝展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
将棋界における数々の記録を更新し続ける藤井聡太竜王・名人(筆者撮影)

 第17回朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞社主催)は2月10日東京都千代田区「有楽町朝日ホール」で準決勝と決勝が行われる。ベスト4に勝ち進んでいるのは藤井聡太竜王・名人(21)=八冠、永瀬拓矢九段(31)、糸谷哲郎八段(35)、西田拓也五段(32)。

 データを基に優勝の行方を予想してみた。

圧倒的な藤井竜王・名人

 本棋戦では藤井竜王が第11、12、14、16回で優勝、今回優勝すると5回目となり羽生善治九段の最多記録と並ぶ。ほかの3人は初優勝がかかる。

 準決勝の対戦カードは藤井竜王・名人-糸谷八段戦と永瀬九段-西田五段戦。それぞれの対戦成績と最近10局の勝敗は以下のとおり(未放映のテレビ対局を除く)。

<藤井竜王・名人の対戦成績と最近10局>

対永瀬九段 15勝6敗

対糸谷八段 7勝0敗

対西田五段 0勝0敗

最近10局 8勝1敗1持将棋

<永瀬九段の対戦成績と最近10局>

対藤井竜王・名人 6勝15敗

対糸谷八段 9勝2敗

対西田五段 1勝0敗

最近10局 6勝4敗

<糸谷八段の対戦成績と最近10局>

対藤井竜王・名人 0勝7敗

対永瀬九段 2勝9敗

対西田五段 0勝1敗

最近10局 6勝4敗

<西田五段の対戦成績と最近10局>

対藤井竜王・名人 0勝0敗

対永瀬九段 0勝1敗

対糸谷八段 1勝0敗

最近10局 6勝4敗

 データからは藤井竜王・名人が圧倒している。2月7、8日に行われた王将戦第4局で菅井竜也八段の挑戦を退け4勝0敗で防衛を果たしたばかり、直近10局も8勝1敗1持将棋(棋王戦第1局の持将棋は1局とみなす)の藤井竜王・名人は「不動の本命」といえる。ただし、直近10局のうち丸山忠久九段に敗れた銀河戦決勝は後手番で持ち時間の短いテレビ棋戦。朝日杯も40分の短時間勝負だし連続で後手番となる可能性があり、わずかではあっても不安材料といえるだろう。

 二番手は直近10局6勝4敗とまずまずで、昨年秋の王座戦五番勝負でも藤井竜王・名人を苦しめ、通算6勝(15敗)を挙げている永瀬九段だ。

「藤井包囲網」の秘策に注目

 今回のベスト4進出者のうち西田五段は振り飛車党、他3人は居飛車党のため、居飛車対振り飛車の対抗形が出現する可能性は高い。

 藤井竜王・名人-糸谷八段戦はどちらが先手になっても角換わりが本命。

 永瀬九段―西田五段戦は先後にかかわらず西田五段の三間飛車か四間飛車の可能性が高く、永瀬九段は居飛車穴熊を軸とした持久戦を採用すると予想する。

 1日2対局で優勝者を決める短期決戦だけに、各棋士「藤井対策」を準備してあることは間違いない。八冠を保持する絶対強者が「藤井包囲網」をどのようにかいくぐるか注目している。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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