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藤井竜王への挑戦権をかけ山崎八段と広瀬八段が激突――第35期竜王戦挑戦者決定三番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
五冠を保持し竜王戦の挑戦者を待ち受ける藤井聡太竜王(筆者撮影)

 藤井聡太竜王(20)=王位・叡王・王将・棋聖への挑戦権を争う第35期竜王戦(読売新聞社主催)は8月9日、大阪府大阪市「関西将棋会館」で山崎隆之八段(41)と広瀬章人八段(35)の挑戦者決定三番勝負第1局が行われる。

 どちらが挑戦者になっても藤井竜王とのタイトル戦番勝負は初の顔合わせとなる。データを基に勝敗と展開を予想してみた。

広瀬八段わずかに優位か

<山崎八段の最近10局>

5月20日 竜王戦1組出場者決定戦

対松尾歩八段 ○

6月16日 順位戦B級1組

対羽生善治九段 ●

6月21日 ALSOK杯王将戦2次予選

対宮田敦史七段 ○

6月28日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対久保利明九段 ●

7月7日 順位戦B級1組

対近藤誠也七段 ○

7月19日 竜王戦決勝トーナメント

対稲葉陽八段 ○

7月23日 将棋日本シリーズ1回戦

対稲葉八段 ●

7月28日 順位戦B級1組

対三浦弘行九段 ●

8月1日 竜王戦決勝トーナメント準決勝

対永瀬拓矢王座 ○

8月4日 ALSOK杯王将戦2次予選

対佐藤天彦九段 ○

<広瀬八段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

3月3日 順位戦A級

対羽生善治九段 ○

3月30日 竜王戦2組

対都成竜馬七段 ○

4月21日 竜王戦2組決勝

対森内俊之九段 ○

6月17日 順位戦A級

対糸谷哲郎八段 ○

6月30日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対出口若武六段 ○

7月6日 叡王戦予選

対松尾歩八段 ●

7月14日 竜王戦決勝トーナメント

対丸山忠久九段 ○

7月22日 順位戦A級

対佐藤康光九段 ○

7月27日 ALSOK杯王将戦2次予選

対本田奎五段 ●

8月5日 竜王戦決勝トーナメント準決勝

対佐藤天彦九段 ○

 両者の直近10局は山崎八段が6勝4敗とまずまずなのに対し、広瀬八段は8勝2敗と明らかに好調といえる。星取りからは広瀬八段優位に見えるが、山崎八段は決勝トーナメントで稲葉八段、永瀬王座と難敵を連破し勢いに乗っているため調子の差はごくわずかと思われる。

相掛かりか角換わりの力戦を予想

 これまでの両者の対戦成績は広瀬八段が5勝3敗と星2つの勝ち越し。戦型は相居飛車が多いが、振り飛車も複数局出現しており的を絞りづらい。最近の両者の選択傾向からは山崎八段先手なら相掛かり志向、広瀬八段先手なら角換わり志向の出だしになると予想する。

 ただし山崎八段はAI(人工知能)を用いての研究が進んだ最新定跡を選ぶことは少なく、自分の信念に基づいた独特の序盤構想で戦うことがほとんどなので、どの戦型に進んでも力戦のねじり合いになることは間違いないだろう。

 調子、過去の対戦成績を総合すると広瀬八段やや有利と見る。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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