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豊島竜王の連覇か、羽生九段のタイトル通算100期か――第33期竜王戦七番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
初防衛戦に臨む豊島将之竜王は復調著しい(筆者撮影)

 豊島将之竜王(30)に羽生善治九段(50)が挑戦する第33期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)は10月9、10日に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で第1局が行われる。

 豊島竜王は昨年広瀬章人竜王(当時)を破り、史上4人目の「竜王・名人」となった。今年度は夏に名人防衛に失敗したが、秋には永瀬拓矢二冠(当時)から叡王を奪取し二冠に復帰したばかり。今期は竜王初防衛をかけての七番勝負となる。

 挑戦者の羽生九段は過去竜王7期の実績を持つ永世称号資格者。前人未到のタイトル獲得通算100期の偉業達成なるかに注目が集まっている。

 データを基に勝敗と展開を予想してみた。

<竜王戦七番勝負日程>

第1局 10月9、10日 東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」

第2局 10月22、23日 愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」

第3局 11月7、8日 京都府京都市「総本山仁和寺」

第4局 11月12、13日 福島県福島市「吉川屋」

第5局 11月26、27日 鹿児島県指宿市「指宿白水館」

第6局 12月5、6日 神奈川県箱根町「ホテル花月園」

第7局 12月16、17日 山形県天童市「ほほえみの宿 滝の湯」

現在の調子からは豊島竜王有利か

<豊島竜王の最近10局>(相手の肩書は対局当時・放映前のテレビ対局を除く)

8月10日 叡王戦七番勝負第7局

対永瀬拓矢叡王 ●

8月14、15日 名人戦七番勝負第6局

対渡辺明二冠 ●

8月31日 順位戦A級

対稲葉陽八段 ○

9月6日 叡王戦七番勝負第8局

対永瀬叡王 ○

9月12日 将棋日本シリーズ2回戦

対藤井聡太二冠 ○

9月15日 順位戦A級

対菅井竜也八段 ●

9月21日 叡王戦七番勝負第9局

対永瀬叡王 ○

9月25日 王将戦リーグ

対木村一基九段 ○

9月29日 王将戦リーグ

対佐藤天彦九段 ○

10月5日 王将戦リーグ

対藤井二冠 ○

<羽生九段の最近10局>(放映前のテレビ対局を除く)

6月28日 将棋日本シリーズ1回戦

対久保利明九段 ●

7月13日 棋王戦本戦

対屋敷伸之九段 ●

7月28日 順位戦A級

対佐藤天彦九段 ●

8月13日 竜王戦決勝トーナメント準決勝

対梶浦宏孝六段 ○

8月17日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局

対丸山忠久九段 ●

8月25日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局

対丸山九段 ○

9月2日 順位戦A級

対糸谷哲郎八段 ●

9月19日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局

対丸山九段 ○

9月22日 王将戦リーグ

対藤井聡太二冠 ○

10月1日 順位戦A級

対斎藤慎太郎八段 ●

 豊島竜王は今夏、名人戦と叡王戦を並行して戦い、過密スケジュールもあって調子を崩したかに思われたが、叡王戦で第8局、第9局と連勝し復調、最年少記録を次々更新している藤井聡太二冠(王位・棋聖)を2回退けている(通算では6勝0敗)のも好調の証明といえるだろう。

 対照的に羽生九段は竜王戦以外の成績が今一つで、直近も4勝6敗と負け越し。順位戦A級など長時間の将棋で逆転負けが多いのが気になる。

 過去の直接対決は羽生九段が17勝16敗と勝ち越しているが、両者の調子には差があり今回の七番勝負は豊島竜王有利と見る。

戦型は角換わりと横歩取り中心か

 戦型は相居飛車で過去3年の直接対決では矢倉になっていないため本命は角換わり。後手番を持った側が何局か変化球として横歩取りに誘導すると予想する。

 このところタイトル戦では少なかった横歩取りだが、両者とも最近この戦型で藤井二冠の先手番を攻略していることから最新研究が用意されていると見ている。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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