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「自粛生活」でも楽しめる囲碁・将棋――棋士作成の動画チャンネルが人気

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
将棋AIを活用した自宅学習で棋力アップが可能

 新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が出され、日本国内の囲碁プロ公式戦は4月8日からストップしている。

 将棋界では対局が続けられているが、遠距離の移動を伴うものは行われず、地方対局を含むタイトル戦はすべて延期となった。

 そんな状況であってもファンに娯楽を提供するためプロ棋士がさまざまなアイデアを形にしている。

 本稿では「不要不急の外出」の自粛が求められている現状で、家にいても囲碁・将棋を楽しみながら強くなれるよう筆者が普段見ているサイトやAI(人工知能)を使った勉強法を紹介する。どれも無料で利用可能なものばかりだ。

 *各サイトのサンプル画像はいずれも筆者のパソコンで閲覧中のものを転載。

囲碁棋士のユーチューブチャンネルが人気

 囲碁界では以前からユーチューブを活用している棋士は存在したが最近急速にその数が増えている。

 筆者がよく見ているのは三村智保九段の「三村囲碁ちゃんねる」の中にある「白熱ネット道場」だ。

 三村九段は主宰するこども教室の生徒の打碁を題材にアマが陥りやすいミスなどをわかりやすく解説する。ほかにもAI同士や人気棋士のネット対局の分析など、コンテンツが充実している。

生徒の対局を先生が振り返りながらアドバイス。教室にいるような雰囲気が感じられる
生徒の対局を先生が振り返りながらアドバイス。教室にいるような雰囲気が感じられる

 またNHK杯の司会で人気の星合志保二段による「星合志保の囲碁実況局」は自分のネット対局を中継するスタイル。軽妙な語り口でファンとの距離感を縮め、注目を集めている。

ネット対局サイトでの13路盤自戦を解説する星合二段。トークのリズムが楽しい
ネット対局サイトでの13路盤自戦を解説する星合二段。トークのリズムが楽しい

 これ以外にも棋士やアマ高段者によるサイトが複数あり、公式の「日本棋院囲碁チャンネル」も開かれている。ニーズに合ったチャンネルを「お気に入り」に登録し視聴すれば必ず上達に役立つだろう。

将棋界でも続々動画配信スタート

 囲碁界に負けず将棋界でも動画配信を行う棋士が増えてきた。

 代表的なものとして昨年3月にスタートしユーチューブで現在登録者数2万7千人を超える人気なのが伊藤真吾五段の「イトシンTV」だ。こちらもネット対局の実況解説を中心に初心者講座など複数のコンテンツがある。

秒読みに追われながら読み筋を披露するスリリングなイトシンTV
秒読みに追われながら読み筋を披露するスリリングなイトシンTV

 4月19日には日本将棋連盟公式の「棋士会チャンネル」の放映も開始され、棋士会副会長の糸谷哲郎八段らを中心に、棋士の修業時代の棋譜解説などを配信している。

AIを使った学習でアマ高段は確実

 ファンにとってプロの対局や解説を見る以外に一番の楽しみは自分の実戦だと思われるが、局後の検討にAIを活用することで効率よく実力アップを図ることができる。コツコツ続けることで少なくともアマ五段までは上達可能と筆者は確信している。

 無料で利用可能な代表的サイトは囲碁だと「ネット囲碁学園」。これはソフトをインストールすることでフリーソフト最強レベルの「LeelaZero」が使え、AIの候補手を参考に自分の棋譜を解析できる。GPU搭載のパソコンならさらに強力な「KataGo」も利用可能だ。

ネット囲碁学園のAI碁盤機能。候補手と期待勝率、さらに候補手の変化図が右の碁盤に示される
ネット囲碁学園のAI碁盤機能。候補手と期待勝率、さらに候補手の変化図が右の碁盤に示される

 将棋AIの活用も同様にソフトのダウンロードが必要になるけれど、検索エンジンや「まとめサイト」の手順を参照することで簡単に導入できるのでお試しいただきたい。

 筆者が近年愛用しているのは「将棋所」(GUIソフト)と「dolphin」(思考エンジン)の組み合わせ。

 無料で利用可能な思考エンジンはいろいろあるが、攻めが得意や受けが得意など、個性(棋風)があるので強弱だけにこだわらず複数の思考エンジンを比較して、自分の好みに合うものをメーンに使うといいだろう。

将棋AIの棋譜解析機能を用いることで一局の流れと、疑問手や敗因を振り返ることができる
将棋AIの棋譜解析機能を用いることで一局の流れと、疑問手や敗因を振り返ることができる

 こうした最新のAIを使えば、プロの棋譜や自戦を詳細に分析し新手の研究もできるから、筆者は還暦に近い今でも将棋では県代表レベルの棋力を維持することができている。

 今回ご紹介した動画サイトやAIを活用することで、かつてない「自粛生活」を内なる自分に向き合い新たな可能性を見出す機会と考え、有意義に過ごしていただければ幸いだ。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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