増えてきた「兼業棋士」――将棋界にも働き方改革?

将棋駒に種類があるように棋士の生き方もさまざま(写真:アフロ)

 3月10日、将棋ソフト「銀星将棋」シリーズなどの開発・販売で知られる株式会社シルバースタージャパンが2020年4月1日から将棋棋士の星野良生四段(31)を社員として採用することを発表した。

棋士と民間企業社員「二足のわらじ」

 これまでも芸能事務所などに所属する棋士はかなりの数が存在したが、ほとんどはタレントとしてのマネージメント契約だった。

 民間企業で社員として棋士が働くのはまれなケースで、星野四段はかねてからツイッターなどで就職先を募集していた。入社後は同社の新作ゲーム「リアルタイムバトル将棋」ほか各種ゲームの企画、開発、広報を担当するという。

 星野四段は棋士としての仕事も対局と普及活動はこれまで同様続ける。岐阜市に本社のある同社の業務をテレワークで行うのかなど、勤務体系については今後明らかになるだろう。

東大大学院生の新四段も棋士兼研究者に

 3月7日の第66回三段リーグ最終日で14勝4敗の成績を残し、プロ入り(四段昇段は4月1日付け)を決めた谷合廣紀三段(26)は東京大学情報理工学系研究科の博士課程に在籍する大学院生で、統計解析に関する著書もある。

 谷合三段は昇段を決めたあとの取材に対し「棋士と研究者を両立していく」と答えている。

 こうした「兼業棋士」は将棋界では珍しいと思われがちだが、世界で最も遊ばれている頭脳スポーツで競技人口5億人以上といわれるチェスの世界ではごく普通だ。

 チェス界では将棋のようにトーナメントだけで生計を立てているプレイヤーは少なく、一流の称号であるグランドマスターの保持者でも多くは別の仕事を持っている。

 ヨーロッパのクラブ対抗戦「ブンデスリーガ」に参加するグランドマスターにも、弁護士やプログラマーとして働きながら参加できる試合だけにエントリーしている選手や、リトアニアの政治家として活躍している女性世界トップ10クラスの選手もいる。

 歴史をさかのぼると学者を兼ねていたチェスプレイヤーは多い。

 ドイツ出身で第2代世界チャンピオンのエマーヌエール・ラスカー(1868年~1941年)は数学者で心理学者としても知られる。

 オランダ出身で第5代世界チャンピオンのマックス・エーワ(1901年~1981年)はハーグ大学数学部長、公認会計士、コンピュータの専門家でもあった。

 チェス界のように多才な棋士が増えることで、将棋界の活性化につながることを期待している。