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王座挑戦権をかけ豊島名人と永瀬叡王が対決――第67期王座戦挑戦者決定戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
三冠復帰を目指す豊島将之名人(筆者撮影)

 斎藤慎太郎王座(26)への挑戦権を争う第67期王座戦(日本経済新聞社主催)本戦決勝、豊島将之名人(29)-永瀬拓矢叡王(26)戦は7月25日に大阪市福島区の関西将棋会館で行われる。各種データから勝敗と戦型を予想してみた。

調子では豊島名人が上回る

<豊島名人の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

5月23日 銀河戦本戦Eブロック

対藤井聡太七段○

5月29日 王座戦本戦

対横山泰明六段○

6月4日 棋聖戦五番勝負第1局

対渡辺明二冠○

6月19日 棋聖戦五番勝負第2局

対渡辺明二冠●

6月25日 王座戦本戦

対渡辺明二冠○

6月29日 棋聖戦五番勝負第3局

対渡辺明二冠●

7月3、4日 王位戦七番勝負第1局

対木村一基九段○

7月9日 棋聖戦五番勝負第4局

対渡辺明二冠●

7月12日 王座戦本戦準決勝

対羽生善治九段○

7月23日 竜王戦挑戦者決定トーナメント

対藤井聡太七段○

<永瀬叡王の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

5月29日 竜王戦ランキング戦1組決勝

対渡辺明二冠●

6月4日 王位戦挑戦者決定リーグ白組プレーオフ

対羽生善治九段●

6月8日 王座戦本戦

対山崎隆之八段○

6月13日 順位戦B級1組

対菅井竜也七段●

6月17日 王将戦1次予選

対梶浦宏孝四段●

6月27日 順位戦B級1組

対郷田真隆九段●

7月5日 王座戦本戦

対高見泰地七段○

7月11日 順位戦B級1組

対斎藤慎太郎王座●

7月18日 王座戦本戦準決勝

対佐藤天彦九段○

7月22日 竜王戦挑戦者決定トーナメント

対鈴木大介九段○

 星取りを見てわかるように両者の調子にはかなり差がある。豊島名人はタイトル戦の番勝負を多くこなしていながら7勝3敗と好調をキープ、また藤井七段を2回も退けているのは第一人者の証だ。

 対する永瀬叡王は直近4勝6敗の負け越しで、勝ち星が王座戦に集まった形。調子の比較では豊島有利と見ていいだろう。

 永瀬としては現時点で今年度連勝ランキング1位(15連勝・2月22日~4月23日)の記録を残すなど、今期はいつになく波が大きい。好調時のリズムにうまく調整して本局に合わせられるかが勝負のカギとなるだろう。

相居飛車のねじり合いを予想

<豊島名人vs永瀬叡王全成績と戦型>

2011年9月2日

新人王戦本戦

豊島○(先)-●永瀬

後手ゴキゲン中飛車

2014年2月27日

銀河戦本戦Cブロック

豊島○-●永瀬(先)

横歩取り3三角

 各棋戦で好成績を上げている両者だが、直接対決は少なくわずか2局。いずれも豊島が制している。

 戦型は豊島名人先手なら角換わりか横歩取り。永瀬叡王先手なら矢倉か角換わりが本命、粘りを信条とする永瀬の誘導で息の長いねじり合いの将棋になる可能性が高いと思われる。

 データを総合すると豊島名人が優位だが、永瀬叡王も竜王戦決勝トーナメントで勝ち進むなど今年度三冠達成の可能性を残しており、その差は紙一重である。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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