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豊島将之王位に挑む木村一基九段、悲願の初タイトルなるか――第60期王位戦七番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
王位戦、棋聖戦と2つのタイトル防衛戦に臨む豊島将之三冠(筆者撮影)

 豊島将之王位(29)に木村一基九段(46)が挑む第60期王位戦(新聞三社連合主催)七番勝負は7月3、4日愛知県名古屋市「か茂免」で第1局が行われる。

木村の王位挑戦は4回目

 豊島王位(名人・棋聖)と木村九段の番勝負は今回が初めて。木村九段は今回で7度目(竜王、王位、王座、棋聖)のタイトル戦登場となるが、これまで奪取の実績はない。

 王位戦では2009年、14年、16年に続く4度目の挑戦となり、初タイトルをかけての七番勝負。今期の挑戦者決定戦でタイトル獲得通算100期のかかる羽生善治九段を破り、充実ぶりがうかがえる。

 豊島王位にとっては渡辺明二冠(棋王・王将)の挑戦を受けている棋聖戦五番勝負と並行してのタイトル戦。棋聖戦では1勝2敗とカド番に追い込まれ厳しい状況だけに、何としても王位のタイトルは守りたいところだ。

直接対決は2年ぶり、対戦成績は互角

<豊島王位vs木村九段全成績と戦形>

2013年7月18日

順位戦B級1組

豊島○-●木村(先)

横歩取り3三角

2014年9月1日

順位戦B級1組

豊島●(先)-○木村

相矢倉3七銀

2015年6月11日

順位戦B級1組

豊島●-〇木村(先)

角換わり腰掛け銀

2016年3月23日

竜王戦出場者決定戦1組

豊島○-●木村(先)

横歩取り3三角

2016年6月1日

王位戦挑戦者決定戦

豊島●-○木村(先)

横歩取り3三角

2016年7月11日

棋王戦本戦

豊島○-●木村(先)

横歩取り3三角

2016年11月10日

順位戦B級1組

豊島●-○木村(先)

横歩取り3三角

2017年8月7日

NHK杯争奪戦本戦

豊島(先)○-●木村

角換わり腰掛け銀

 データが示すとおり、過去8局は4勝4敗の五分で全くの互角といっていいだろう。戦形的には豊島王位が後手番で横歩取り3三角を多用しているのが目立つ。

 対局内容からは短手数の切り合いに進めば「序盤・中盤・終盤隙がない」豊島王位が、入玉模様の展開を含む長手数のねじり合いなら「千駄ヶ谷の受け師」木村九段が、それぞれ勝ち星につなげていることが多い。

相掛かりか角換わりの可能性が高い

 過去のデータからは横歩取り、あるいは矢倉か角換わりが予想されるが、2年間のブランクがあり最近の公式戦を見るとそう単純ではない。この半年あまり豊島王位は後手番で得意としていた横歩取りを用いていない。

 よって木村九段先手の場合は初手▲2六歩から最近多用している相掛かりに進みそうだ。

 一方豊島王位の先手番では角換わりを志向すると思われる。

 角換わりを外すため後手の木村九段が横歩取り3三角を用いることも十分考えられるが、対横歩取りの先手番を豊島王位は得意としている(直近7連勝)ので、木村九段も積極的には選びにくいだろう。

 以上のことから相掛かりと角換わりを主体としたシリーズで互角の戦い、最終局までもつれる可能性が高いと予想する。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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