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A級昇級残り1枠を手にするのは――順位戦B級1組最終日展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
第76期名人戦七番勝負を対局中の佐藤天彦名人(筆者撮影)

 第77期順位戦(朝日新聞、毎日新聞主催)B級1組は3月14日に東西の将棋会館で最終13回戦が行われる。

 A級への昇級枠2つのうち一つは渡辺明二冠(34)が11勝0敗で確定しており残る1枠を巡っての昇級争いと、降級枠2から逃れるための残留争いを予想してみた。

木村九段、斎藤王座、行方八段に可能性

 現在順位戦制度の頂点にいるのは佐藤天彦名人(31)。B級1組から昇級し名人挑戦権を争うA級に在籍することはトップ棋士の証でもある。元A級やタイトル経験者が多いこのクラスは昔から「鬼のすみか」と呼ばれ、例年最後まで激しい昇降級争いが演じられている。

 12回戦(抜け番あり)を終えた時点で11戦全勝の渡辺二冠以外は全員4敗以上を喫し、二番手争いは大混戦だ。順位上から木村一基九段(45)、斎藤慎太郎王座(25)が7勝4敗。6勝5敗最上位の行方尚史八段(45)までが昇級圏内。

 木村九段(順位5位)は勝てば昇級の自力。斎藤王座(順位10位)は木村が敗れ自分が渡辺二冠に勝つと昇級。3番手の行方八段(順位2位)は最終戦で木村九段と直接対決のため、斎藤王座が敗れ自分が勝つと逆転昇級となる。3人とも昇級には最終戦勝利が絶対条件だ。

<昇級候補の最終戦相手との対戦成績>

木村九段 8勝-行方八段 12勝

斎藤王座 2勝-渡辺二冠 1勝

 データが示すとおり木村九段は行方八段をやや苦手にしており、斎藤王座は星一つ勝ち越しているものの今年度勝率ランキング2位(36勝10敗・3月12日現在)と絶好調の渡辺二冠が相手でギリギリの勝負が予想される。

 あえて候補を挙げるとすれば、勝率ランキング15位(24勝12敗)とまずまず好調の木村九段がわずかに有利と見る。

残留争いも混戦

 B2への降級者は2名。危ない順に3勝8敗の野月浩貴八段(45)、橋本崇載八段(35)、4勝7敗の畠山鎮七段(49)、菅井竜也七段(26)の4人。このうち野月-菅井が最終戦で直接対決。

 4勝の2人は勝てばもちろん残留で、3敗グループは負ければ即降級。

 ただし最終戦で他の3人より順位上位の橋本八段は勝てば菅井、畠山のいずれかが敗れた時点で残留。順位下位の野月八段は自分が菅井七段に勝ち、畠山と橋本がともに敗れた場合のみ畠山を順位一つの差で抑えて残留となる。

 実力拮抗のこのクラスだけに残留争いでもどんなドラマが起こるかわからない。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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