将棋界に「女性棋士」誕生はいつ――女性奨励会員のチャレンジ

棋界の頂点を決める名人戦。女性棋士登場の日はくるだろうか(筆者撮影)

 今年3月4日東京「将棋会館」で第62回奨励会三段リーグ最終日が行われ、長谷部浩平三段(23)と池永天志三段(24)が昇段を決めた。2人は4月1日付で晴れてプロ棋士四段となった。

 同日、里見香奈三段は7勝11敗の成績で年齢制限(26歳の誕生日を迎える三段リーグ終了までに四段昇段)のため奨励会を退会となり、三段リーグに在籍する女性は西山朋佳三段(22)ただ一人となった。

女流五冠にも厚かった三段リーグの壁

 里見は女流棋士としては五冠(女流王座、女流名人、女流王位、女流王将、倉敷藤花)と六大タイトルのうち五つを占める圧倒的強者であるが、三段リーグの壁は厚かった。

 「棋士」とは別のプロ制度である「女流棋士」制度は1974年に最初のタイトル戦である女流名人位戦(現・女流名人戦)の創設とともに発足、これにはプロ養成機関を抜けた四段から棋士(囲碁は初段)という制度の厳しさも背景にあった。現在では現役・引退を合わせて約60名の女流棋士がいて対局や普及で活躍している。

 男女の別なく棋士(四段以上の正会員)になるためには現在は年2回の奨励会三段リーグで上位2名に入るか、次点2回でフリークラス入りの道が一般的、ほかにもアマや女流棋士が公式戦で規定の成績を挙げることで四段編入試験の受験資格を得ることができる。

 このように奨励会を退会になっても棋士になることは可能で、里見女流五冠にもチャンスは残されている。

囲碁やチェスでは女性トップ棋士も存在

 頭脳スポーツの他競技では女性だけに特化したプロ制度というものは少なく、女性のみ参加できる棋戦が設けられていることが多い。

 将棋界とよく比較される囲碁界では女流トップが男性強豪を破ることは珍しいことではない。中国出身のゼイ・ノイ九段(54)は2000年に当時所属していた韓国棋院の国手戦で並みいるトップ棋士を退け挑戦者となり番勝負でも当時世界最強棋士の一人、チョ・フンヒョン九段を2勝1敗で破ってタイトルを獲得している。

 チェスではハンガリーの女性GM(グランドマスター)ユディット・ポルガー(41)は男女合わせた世界ランキング最高8位(2004~2005年)まで上ったことがあり、ほぼすべてのトップ10プレイヤー(ポルガー以外は男性)に勝利している。スーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」との対戦で有名なガルリ・カスパロフ(1985~2000年世界チャンピオン)もポルガーに敗れたことがある。

 こうした事例から短距離走や格闘技と違って、体力にさほど依存しない頭脳スポーツにおいて性差は本来あまりないと考えられ、女性の将棋トッププレイヤーが少ないのは単にプロを目指す女子児童・生徒が少ないことであろう。

 将棋界では現在奨励会に在籍する女性は全体の1割にも満たないが、西山朋佳三段は4月にスタートした今期三段リーグでは4勝2敗(5月21日現在)と上位につけている。37人で2人の昇段枠を争う狭き門(全18回戦)ではあるが、初の「女性棋士」誕生に期待がかかる。