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コロナ支援が次々「打ち切り」に 「第3波」に備える政策を考える

今野晴貴NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
画像はイメージです。(写真:レウサイト/アフロイメージマート)

 先日10日、厚労省は新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇止めが11月6日時点で7万242人に達したと発表した。前週から1112人増え、業種別では製造業が1万3409人と最多で、飲食業1万508人、小売業9474人となっている。

 厚労省による報道発表は全国のハローワークや労働局に相談のあった事業所の報告をもとに集計しており、網羅的に把握できてはいないため、実際の解雇者はさらに多いとみられる。

 最近になって「第三波」が現実的になるなど新型コロナの経済的影響は長期化しており、収束は見通せない状況だ。今後も解雇者は増えていくことが予想される。

 そのため、それに対応した生活支援策が必要である。すでに、社会福祉協議会が実施する特例貸付の申請件数は開始した3月から11月7日時点で、131万件を超えている。また、家賃を補助する住居確保給付金は7月までに約8万5000件に達し、昨年度の1年分の20倍以上となっている。

 ところが、現在の新型コロナ関連の生活支援策は期限付きであり、すでに支援が受けられなくなっている人も出てきている。

 そこで、今回は、新型コロナ関連の生活支援策の現状をレビューしたうえで、今後必要とされる施策について考えていきたい。

生活福祉資金の特例貸付

 まず、社会福祉協議会(社協)が実施する生活福祉資金の特例貸付について見ていこう。もともとあった制度だが、新型コロナの感染拡大に合わせて要件緩和、貸付額引き上げが実施された。

 生活福祉資金には「緊急小口資金」と「総合支援資金」の2種類がある。緊急的、一時的に生計維持が困難となった場合に利用できるのが「緊急小口資金」だ。こちらは無利子・保証人なしで1回20万円以内を上限に借入が可能となっている。

 当初は申請手続きが煩雑で、とても「緊急」的に対応できる運用とはなってなかったが、申請を社協以外にも労働金庫や郵便局で行うことができるようになったり(9月末に終了)、郵送による申請も認めている。また、提出書類として印鑑証明書まで必要だったが、現在は不要となっている。

 次に、失業などにより生活再建が必要な場合に利用できるのが「総合支援資金」だ。無利子・保証人なしで、単身世帯は月15万円以内、2人以上世帯は月20万円以内の借り入れが、原則3か月以内で可能である。さらに、自立相談支援機関(生活困窮者自立支援法に基づき各自治体に窓口が設置されている)による支援を受ける場合に、追加で3か月まで延長できる(合計6カ月)。

 生活福祉資金の特例貸付は、現時点で今年12月末までの申し込み受付と期限が定められている。また、2つの貸付を利用した場合、支援が受けられるのは約7か月間ということになる。コロナの収束が見通せない中では、申し込み期限の延長と貸付期間の延長が必要ではないだろうか。

住居確保給付金

 次に、家賃補助を行う住居確保給付金についてだ。こちらも、もともとの制度を要件緩和している。

 対象はもともと離職・廃業から2年以内の者のみであったが、コロナの影響を受けて休業などにより収入が減少している者も含まれた。その上で、いくつかの支給要件が設けられている。

 支給期間は原則3か月で、最長9か月まで延長可能である。支給額は生活保護の家賃補助額と同額である(東京23区の単身世帯で53700円、2人世帯で64000円)。

 収入要件は世帯収入合計額(月額)が市町村民税均等割非課税となる収入額の12分の1+家賃額(生活保護と同水準)を超えないこととされ、東京23区であれば単身世帯で13.8万円、2人世帯で19.4万円とである。生活保護基準とさほど変わらない厳しい水準だ。

 資産要件として、保有の認められる世帯の預貯金額は市町村ごとに異なり、東京23区の単身世帯で50.4万円、2人世帯で78万円などと定められている。こちらは生活保護よりも緩いとは言える(生活保護の場合、都内単身だと6万円程度である)。

 さらに、求職活動要件として、「誠実かつ熱心に求職活動を行うこと」が求められ、ハローワークへの求職申込が必須とされていたが、コロナの影響を鑑みて現在では不要となっている。

 上記の通り、住居確保給付金の支給は最長9か月までとされており、感染が拡大した3月から受給していれば、年内に終了となる。こちらも、支給期間を延長するか、支給要件を満たす限りは支給を継続するなどの措置が必要ではないだろうか。あるいは、再支給は解雇された場合に限っているため、緩和するのも一つの方法だろう。

国はさらなる生活支援策を講じるべき

 以上のように、コロナ関連の生活支援策は期限付きのものであり、年末年始あたりに切れてくる人が次々と出てくることが予想される。少なくとも、生活福祉資金の特例貸付の申し込み期限延長、生活福祉資金の特例貸付と住居確保給付金両方の貸付・支給期間の延長は必須だろう。

 それとともに、生活に困った方に検討していただきたいのは、生活保護の利用である。生活保護は上記の制度と異なり、支給期間に定めがないため、要件を満たす限りで利用し続けることができる。コロナの影響を受け、自動車の保有を当面認めるなど、要件が一定緩和されている。

 とはいえ、生活保護も使いにくい部分が多いことも事実だ。そもそも外国人の一部しか利用できない。生活保護を利用すること自体が恥ずかしいという意識は根強く、申請しようとしても役所の職員に追い返される場合もある。

 生活保護基準(収入基準)は安倍政権の下で引き下げられ、資産要件はもともと厳しい(自動車を原則保有できない、保有できる預貯金が非常に少額)。保護申請すると原則として行われる親族への扶養照会(援助できないかどうかの連絡)も大きなハードルとなっている。

 生活保護においても、制度改革や現場での運用改善が求められる。

 私が代表を務めるNPO法人POSSEでは、これら制度の利用支援を行うとともに、実際の利用者の立場から制度改革の提言も行っている。これから各種の福祉制度を利用したい、あるいは利用していて問題を感じている、という方はぜひご相談いただきたい。

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*社会福祉士や行政書士の有資格者を中心に、研修を受けたスタッフが福祉制度の利用をサポートします。

NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。

NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。近著に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(青土社)。その他に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。

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