各党「雇用政策」比較 「働き方改革」はどうなっていくのか?

(写真:アフロ)

 参院選の投票日が目前に迫ってきた。筆者は先日、これまでの雇用改革を検証する記事を書いたところだ。

 与党は「労働」についてどんな姿勢だったのか? ――パワハラ、残業、内部通報、外国人――

 続いて今回は、参院選挙を前に各政党が出した主な雇用政策を比較してみたい。雇用政策といっても膨大にあるので、本記事では特に重要な問題である長時間労働対策を中心に比較しつつ、数名の比例候補者にも言及したい(各党の最低賃金の政策については、次回の記事で比較する予定だ)。

各党の長時間労働対策は? インターバル規制、時間外労働の上限規制…

 まずは、ブラック企業対策・「働き方改革」の核となる長時間労働対策を見ていこう。比較するのは、自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、日本維新の会、れいわ新選組である。

自民党

  • 「働き方改革関連法に基づき、長時間労働の是正…を着実に推進します」
  • 「長時間労働の事業場への監督指導をしっかりと行います」
  • 「時間外労働の上限規制や休息時間(インターバル)規制の導入等について検討を進め、男性中心型の労働慣行を大胆に見直すことにより、長時間労働を是正します」

(総合政策集2019 Jーファイル)

公明党

  • 「「地方版政労使会議」「地域働き方改革会議」を活用し、地域の特性や課題を分析しつつ…長時間労働の是正…など、地域特性に応じて働き方改革を戦略的に進めます。」
  • 「過重労働撲滅特別対策班など労働基準監督署の執行強化」

(「公明党 2019参院選政策集」より)

立憲民主党

「残業代完全支払い・みなし残業禁止などによって、まっとうな働き方を実現します」

(「立憲ビジョン2019参院選公約」より)

国民民主党

「インターバル規制なとて長時間労働と過労死を防き、とんな労働環境にあっても、健康て安心して働ける働き方改革を進めます。」

(「国民民主党 新しい答え2019」より)

日本共産党(関連する項目が多いので一部のみ)

  • 「「高度プロフェッショナル制度」…を廃止します」
  • 「ホワイトカラーを際限のない長時間労働に追いやる企画業務型裁量労働制を廃止します。専門業務型裁量労働制については、真に専門的な業務に限定し、その要件と運用を厳格化します。事業場外みなし労働時間制についても、その要件と運用を厳格化します」
  • 「残業時間の上限基準としては、週15時間、月45時間、年360時間が定められています(労働省告示154号)。これに法的拘束力をもたせます。この上限時間を労働基準法に明記し、例外なくすべての労働者に適用します。残業時間の青天井を容認する三六協定の特別条項を廃止します」
  • 「労働基準法に連続11時間の勤務間インターバルを明記します。例外は、必要最小限にとどめます」
  • 「各事業場ごとに労働時間管理台帳を作成し、管理職を含めた全労働者の実労働時間を正確に把握・記録することを使用者に義務づけます。…労働時間管理台帳を作成・記録・保存をしない事業主に対する罰則を設けます」
  • 「労働基準監督署の体制強化や相談窓口の拡充などをはかります。…労働監督官数は、ILO基準(「先進国」の場合、1万人の労働者ごとに1人の監督官を配置する)にそって、政府の責任で2倍以上に増やします」

(「2019年参議院選挙 各分野の政策」)

社会民主党

「「高度プロフェッショナル制度」(残業代ゼロ制度)と過労死ラインまで長時間労働を可能にする労働基準法の改悪を中止させます」

「長時間労働を規制するため、「最低でも連続した11時間の休息時間」を義務化するインターバル規制を導入し、過労死を根絶します」

(「ソーシャルビジョン3つの柱」より)

 自民党、公明党、立憲民主党(直接的には未払い残業対策だが、実質的な長時間労働対策と判断した)、国民民主党、日本共産党、社会民主党が、参院選用の政策に長時間労働対策を明記している。

 ここで政権与党の自民党、公明党が長時間労働対策をはっきりと掲げているということは確認しておいて良いだろう。一方、日本維新の会、れいわ新選組は長時間労働に触れていない。

 次に、具体的な長時間労働対策の中身を見ていこう。特に、今年4月に「働き方関連法」が施行されたことを受けて、その不十分な部分をどのように修正していくのかに注目していきたい

 すでに問題が提起されているものとして、まずは就業時間と始業時間の間に一定の休息時間を設けるインターバル規制がある。

 4月施行の改正労働時間等設定改善法では「努力義務」にとどまっているが、今回、自民党、国民民主党、共産党、社民党が言及している。

 ただ、自民党は2016年の政策集から全く同じ一文を用いているため、今年4月の法改正後にさらなる義務化を想定しているとは考えづらい。一方、共産党と社民党は、EU並みの連続11時間休息の義務化を明確に打ち出している。

 続けて、時間外労働の上限規制についてはどうだろうか。自民党、共産党、社民党が触れている。

 今年4月施行の改正労働基準法では、時間外労働に初めて上限が認められることになったが、最大で月100時間の過労死基準までは時間外労働が可能なままだ。

 この点についても、やはり自民党の「上限規制」に触れた一文は、上記と同じく2016年から一文字も変わっていないため、さらなる規制を検討しているのかは疑わしい。社民党、共産党は過労死ラインを下回る上限規制を掲げている。

裁量労働制の規制、労働時間把握に対する罰則

 共産党独自の長時間労働対策は、上にあげただけでもボリュームが多く、非常に積極的であることがうかがえる。実際に、現場の労働相談の実感からも、必須の政策が適されている。

 そこで、共産党の政策については、次の二つに絞って追加で紹介したい。

 一つは、現行のみなし労働時間制度の規制だ。企画業務型裁量労働制の廃止、専門業務型裁量労働制の業務内容の要件と運用の厳格化、事業場外みなし労働時間制度の要件と運用の厳格化が掲げられている。

 他の党は触れていないが、現行のこれらの制度のもとでは、たとえ1日10数時間働いても、労使で決めたみなし労働時間分(1日8時間程度のことが多い)しか働いたことにならない。

 これらの「定額働かせ放題」制度は、業務に裁量がある労働者や、どこまでが労働時間がわかりづらい労働者のみに適用が限られている。しかし、実際には企業に都合よく杜撰に適用される被害が頻発している。時間外労働の上限規制の「抜け穴」としても悪用されやすく、厳格化による対応は急務といえよう。

 共産党のもう一つの興味深い政策として、実労働時間把握を怠った企業に対する罰則の導入をあげたい。今年4月施行の改正労働安全衛生法により、企業の労働時間把握が初めて条文で明確に規定された。

 しかし、それでも罰則は定められていないという難点がある。どれだけ労働時間規制が整備されても、そもそも労働時間が記録されていなければ、骨抜きになってしまう。

 労働時間を把握しなかった企業に対する罰則の導入は、もっと他党でも検討されてしかるべきではないだろうか。

セクハラ、コンビニオーナー、非正規…闘う「当事者」出身の比例候補者たち

 各政党の雇用政策に対するスタンスを判断するうえで、公約における雇用政策だけでなく、比例代表に注目してみるのも一つの手だ。全国から投票できる比例候補者にどのような人物を配置するかは、その政党の主張を反映していると思われるからだ。

 ここでは、すでに実績のある現役議員ではなく、新顔に絞ってみたい。さらに、基盤のしっかりした大組織の出身ではなく、ユニークなかたちで労働運動に携わってきた新人候補者にスポットを当ててみよう。

 まずは、立憲民主党の佐藤かおり氏。佐藤氏は、派遣社員として大手通信会社に勤務中にセクハラ被害に遭い、北海道ウィメンズ・ユニオンに加盟して団体交渉、民事訴訟で会社と争い、労災申請も行った。

 労災は最初の申請で不支給となるも、再審査請求、行政訴訟を経て、認定を勝ち取っている。彼女の事件が、厚労省のセクハラによる精神障害の労災認定基準の改定につながっている。その後、佐藤氏はセクハラと闘う労働組合であるパープル・ユニオンを設立し、執行委員長を務めてきた。

 次に、れいわ新選組から二人。一人は三井義文氏。三井氏はセブンイレブンオーナーとして、コンビニ加盟店ユニオンの副執行委員長になって闘い、15年あるはずの契約期間のうち、わずか9年で本部から契約解除されている。本部に対して24時間営業の改善などを要求し、本部からオーナーの立場を守るためのフランチャイズ法制定を求める運動も続けてきた。

 同党からもう一人は、渡辺照子氏。渡辺氏はシングルマザーの派遣労働者として、コンサル会社で3ヶ月更新を繰り返し、約17年間ものあいだ働いてきた。しかし、労働契約法改正による無期転換を逃れるために雇い止めに遭い、派遣ユニオンに加入して雇い止め撤回を求めて闘ってきた。改正派遣法を審議した2015年の参議院厚生労働委員会の参考人質疑で意見を述べるなど、派遣労働者としての声を発信してきた経験も多い。

 最後に、社民党の大椿ゆうこ氏。大椿氏は、関西学院大学で障がい学生コーディネーターとして有期雇用で働いていたところ雇い止めに遭い、大阪教育合同労働組合に加入して原職復帰を求めて闘ってきた。原職復帰は叶わなかったものの、その後は同労組の専従職員となって執行委員長も務め、労働相談を受けながら数々の企業と争ってきた人物だ。

 このように、従来の企業組合と異なる新しいユニオンに身を置いて、セクハラ、コンビニオーナー、非正規などの労働問題と闘ってきた「当事者」たちが、様々な政党から候補者として声を上げていることは、もっと注目されてしかるべきだろう。こうした現場で闘う候補者たちを比例で新たに擁立したことじたいが、公約にとどまらない各党の労働問題への姿勢を表していると言えるのではないだろうか。