一流スラッガーも最初は三振数に苦しんだ

 野球の華、本塁打。一振りで試合展開をひっくり返せる豪快なスラッガーには三振がつきものだ。ボールに最も強い力を伝えられるポイントはホームベース前方の手が伸び切ったところ。これより前で捉えようとするとバットは空を切るか先っぽにしか当たらない。もっと引きつけたポイントにインパクトを持ってくると対応出来る前後の幅は広がるが、その分飛距離を出すことは難しくなる。稀代のスラッガー佐藤輝明(阪神)もルーキーイヤーは24本塁打を放つ一方で173三振を喫し、来季以降の課題が浮き彫りとなった。

 佐藤輝は大学時代にリーグ戦通算14本塁打を放ち、関西学生野球連盟の最多本塁打を塗り替えた打棒の持ち主。オープン戦では12球団トップの6本塁打をマークした。結果を残して開幕スタメンの座を勝ち取ると規格外の飛距離でファンを魅了し前半戦だけで20発のアーチを描いた。しかし後半戦は無安打の日々が続いて2軍落ちするなど苦しんだ。その様子は三振率の上昇にも現れている。(『データで楽しむプロ野球』参照)

オープン戦が31.1%

交流戦までが35.7%

オールスターまでが36.7%

オールスター後が41.6%

 トータル126試合455打席で173三振を喫し三振率は38%だった。これは比較されがちな村上宗隆(ヤクルト)がプロ2年目に36本塁打を放った2019年の31%よりも高く、見過ごせる数字ではない。村上も三振の多さを指摘されていたが昨季は22.3%、今季は21.6%にまで改善した。他にもお手本となる先輩がいる。大学時代の佐藤輝については「柳田2世」と評する声もあった。柳田悠岐(ソフトバンク)もプロ1年目はファーム77試合の出場で85三振を喫し、三振率は29.3%。翌年もファーム51試合で打率3割を記録する反面、三振率は30%と高かった。それが1軍で144試合出場にした2014年には21.3%となり、2015年以降は10%台のシーズンが多くなっている。その鍵は逆方向への打球が握っていそうだ。

スラッガーが逆方向にも打てると首位打者を獲れる

 村上のレフト方向へ飛んだ打球の打率は、2019年が.116。これを昨季は.178で今季は.165とした。柳田は村上以上に成績向上が顕著で1軍68試合に出場し経験を積んだ2012年は.160、出場数が100試合を超えた2013年は.157だったが144試合出場を果たした2014年は.219。トリプルスリーを達成し首位打者を獲得した2015年は.274と対応し2014年から昨季まで7年連続で4割以上の出塁率を記録していた。デビュー時からスラッガーとしては三振率の低い吉田正尚(オリックス)は左方向への打率が.250前後と元々高く、それが.290台になった昨季と今季は2年続けて首位打者のタイトルを獲得した。佐藤輝の逆方向への打率は.083。課題であることは明白だが完全な弱点とは言えないかもしれない。打率こそ高くないが描いたアーチは5本、逆方向に叩き込む力を間違いなく持っているからだ。

 近畿大学2年秋の筑波大学戦では追い込まれてから先制アーチを神宮のレフトスタンドに叩き込み、全国にその名を轟かせた。高校3年時、まだ無名の存在だった佐藤輝のポテンシャルの高さをワンスイングで見抜いた近畿大学の田中秀昌監督は、プロに送り出した野手の共通点として逆方向に強い打球を飛ばせるところを挙げている。自慢の飛距離を損なわない、打撃のタイミングやリズムを崩さない範囲で今よりも少し手前のポイントをつかめば、三振は減り安打は増えるはずだ。大学時代の佐藤輝は1年春に39打席で10三振、秋は45打席で12三振。1年時の三振率は26.2%だったが2年時は春秋トータルで12.7%にまで改善した。プロの世界でも2年目のアジャストなるか。