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今季の丸は早打ち傾向?ファーム再調整を経て不振脱出なるか。

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年
今季は不調の丸佳浩だが巨人が巻き返すためには欠かせない存在。復調なるか。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 甘い球を一発で仕留める力強さとじっくり球を見極め四球をもぎ取るしぶとさを併せ持つ。丸佳浩(巨人)は相手バッテリーからすれば実にやっかいな打者だ。しかし今季は不振に陥り、7月27日時点での成績は打率.235、11本塁打、25打点、OPS.702。前半戦終了翌日の7月18日に登録抹消され、現在はファームで再調整となっている。

 打撃もさることながら今季の丸は大きな特徴である出塁能力を発揮出来ていない。広島在籍最終年の2018年には出場試合数を上回る130四球を選び出塁率は.468。2019年の巨人移籍後も.380前後の高い出塁率をキープしてきた。しかし今季の出塁率は.302。これは1軍初出場となった2010年の14試合で.227だったシーズンを除けばキャリアワーストだ。

 三振を1つする間にいくつ四球を選んだかを示すBB/Kは0.8以上ならかなり優秀、1.0以上ならリーグに1人いるかいないかの高成績。四球獲得能力に優れる丸は2018年に1.0を記録したが巨人に移籍した2019年からは0.69、0.62、0.53と下降傾向。それでも昨季は0.91と持ち直した。しかし今季は0.63となっており昨季までの通算BB/K0.74よりも低いものになっている。

 何より異変を感じさせるのが今季は打席数に占める三振と四球の割合が昨季までより明らかに減っている。昨季までの通算成績は6789打席で960四球、1296三振。四球と三振が全打席の33%を占めていた。それが今季は23%。130四球、130三振がどちらもリーグトップだった2018年は46%だったから5年前と比べると半減だ。

 この数値は高ければ優秀で低ければ改善の余地があるという類のものではなく、早打ち傾向かじっくり見極めるタイプかの違いを示したものに過ぎない。ただ丸が1軍に定着する前、ルーキーイヤーの2008年から3年間のファーム成績でも打席に占める四球と三振の割合は28%、28%、29%だった。球数をかけてじっくり勝負するのが本来のリズムだと考えられる。今季の23%は丸にとっては目立って低く、1打席当たりに投げさせる投球数も昨季までは4球以上が当たり前だったが今季は3.8球に減っている。

 成長を目指してのスタイルチェンジがうまくいかなかっただけなら戻せばいい。丸ほどの実力と実績を持つ選手なら自分の型を持っているはず。そのためには結果が求められる1軍に帯同しながらよりも、ファームで時間をかけた方がトータル的には好結果が得られるかもしれない。だがもし他の原因、例えば目の衰えにより見極め能力が低下している、などだった場合の事態は深刻だ。

 巨人は現在Bクラスの4位だがまだ50試合以上残っており巻き返しは十分に可能。逆襲のためには丸の活躍が必要不可欠、1軍昇格する際にどんな状態になっているのか。ラストスパートのカギを握っている。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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