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大谷ドラゴンズなら中日は首位争いの真っ只中だった?

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年
本塁打を量産する大谷翔平(エンゼルス)(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今季30本目のアーチは150m越えの特大弾。月間15本塁打は日本人最多。WBCでMVPに輝いた大谷翔平(エンゼルス)はシーズンでも打率.306(リーグ4位)、30本塁打(リーグ1位)、67打点(リーグ1位)という大活躍を続けている(以下、成績は全て7月2日時点のもの)。メジャーで三冠王が狙えそうなこの怪物スラッガーがもし中日にいたら、セリーグはどうなっていたのであろうか。

大谷の加入で約50得点増えるはず

 現在の中日は73試合を戦い28勝43敗2分で借金15、苦戦が続き順位は6位となっている。チーム本塁打は31本でほぼ大谷1人と同じ。240失点はリーグ2位の好成績ながら198得点はリーグ最下位。12球団の中で唯一200得点に届いていない。投手陣は打線の援護に恵まれず防御率1.95の高橋宏斗でさえ3勝6敗と黒星先行。現役ドラフトでDeNAから移籍した細川成也が主軸として奮闘しているが上位進出、巻き返しへ向けての課題は明白だ。

 もし大谷がチームの一員となったらDH制のないセリーグでは外野守備に就くことになるだろう。センターの岡林勇希、ライトの細川は外せないとして、長年チームを支えた大島洋平には代打の切り札として待機してもらおう。ここまでレフトでスタメン出場した選手の打撃成績は打率.237、1本塁打、9打点、OPS.547とアドバンテージを生めていない。「3番・レフト、大谷」のアナウンスがバンテリンドームに流れるようになったとしたら得点はどれぐらい増えるのか。

 RC(Runs Created)は個人の得点能力を表す総合指標の1つで打撃成績を得点に換算したものという捉え方も出来る。この数値は実際の得点よりも少し大きめになるがあくまでも目安、参考程度ということでご容赦願いたい。中日のレフトの選手のRCは18.3、大谷のRCは78.3だった。大谷の出場試合数の方が多いため中日の消化試合数に合わせると68.9となる。つまり18.3から約50得点増えることになる。

投手・大谷の活躍で16失点少なくなる

 しかも大谷の魅力は打撃だけではない。メジャー屈指のスラッガーはメジャー最高峰の投手でもある。7勝はリーグ10位で防御率3.02はリーグ8位、奪三振率11.99は堂々のリーグ1位だ。大谷がチームに加わるということはマウンドにも立つということだ。

 中日の先発陣はここまで429回を投げて162失点、自責点は142点だから防御率は2.98。小笠原慎之介、涌井秀章、柳裕也、高橋宏の顔ぶれに本格派右腕がもう1枚加わるとローテの谷間はなかったと考え、鈴木博志、メヒア、仲地礼亜の代わりに大谷が先発していたとする。さらに福谷浩司、松葉貴大の登板機会も半分だったと仮定する。投球回は65回2/3だから二刀流をこなしながらのイニング数としても現実的な数字だ。

 野手の守備力に影響されない奪三振、与四死球、被本塁打から算出されるFIP(Fielding Independent Pitching)は防御率に近い数値となるため擬似防御との見方も出来る。大谷のFIPは3.60。一見すると打撃成績と比べて飛び抜けた数字には思えないが優秀な成績であることには間違いなく、大谷と置き換わる分の5投手の合計成績から算出したFIP3.94よりも好成績。しかも日本で圧倒的な成績を残したダルビッシュ有(パドレス)を始め、海を渡った歴代の好投手たちもメジャーでの被本塁打は増えてしまう。大谷も例外ではなく日本で0.40だった被本塁打率がメジャーでは0.95と倍増以上に。これが日本時代と同じ水準に戻るとするとFIPは2.65まで改善する。3.94が2.65になるということは約67%にまで減っている。5投手の合計成績は48失点だったから大谷が投げれば約32失点で済む。失点は16点減るようだ。

大谷ドラゴンズなら首位に肉薄

 ここまでの計算で中日に大谷がいれば50得点増えて16失点減ることがわかった。そして得点と失点がわかれば(得点の2乗)÷(得点の2乗+失点の2乗)の計算で妥当な勝率を割り出せる。248得点、224失点の大谷ドラゴンズの予想勝率は5割5分と見事に勝ち越し。73試合消化から引き分けの2試合を除くと予想される成績は39勝32敗で貯金7。しかも中日が現実よりも11試合多く勝つということは他球団がそれだけ負けるということ。阪神が中日戦で勝ち試合を2つ落としていたとすると39勝31敗3分。龍虎間で白熱の首位争いが繰り広げられていることになる。

 なんということだ。大谷はたった1人でリーグのパワーバランスを逆転させてしまった。もしNPB復帰を望んだならば獲得した球団の優勝がほぼ確定してしまう。

 今季の大谷の年俸は3000万ドル、日本円で43億円。これは選手会が発表した中日の年俸総額(外国人選手を除く)19億9610万の2倍以上だが戦果や広告価値、グッズ収入などを考えればお釣りがたくさん来るだろう。恐るべし、スーパースター。くれぐれもケガだけには気をつけてください。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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