共にK/BBが6超え。選抜注目投手は石川の2人の下級生右腕
安定感ある投手は三振が多く四球が少ない
開幕まで3週間を切った第90回記念選抜大会。優勝候補には投打にドラフト候補を多数擁する大阪桐蔭、昨秋の明治神宮大会を36年ぶりに制した明徳義塾、新チーム64勝2敗2分と総合力の高い東海大相模、公式戦16試合で23本塁打の東邦などが挙げられる。実戦が始まって間もない春は夏に比べて投手有利と言われており、勝ち進むためにはエースの奮起が欠かせない。
投手の能力を表した指標の中にK/BBというものがある。計算式は三振÷四球で、四球を1つ与える間にいくつの三振を奪ったかを示す。
打球を前に飛ばされるとたとえ打ち取った当たりでも打球が弱過ぎて内野安打になったり、野手の間に落ちることもあるが、三振は天候や野手の守備力の影響を受けない。最も確実で、リスクの少ないアウトの取り方だ。
四球の価値の高さはアスレチックスの快進撃を描いた「マネーボール」で示された通り。打率よりも出塁率に注目することで高い勝率を収めた。逆に投手の視点からすれば四球を出さないことは勝てる投手の必須条件と言えるだろう。
計算方法は実に単純でありながらK/BBが高い投手は完成度の高い投手であることが多く、代表的な例が菅野(巨人)。昨年のWBCでも日本のエースとして活躍した右腕のプロ通算K/BBは4.46。3.5以上が優秀とされているから文句なしだ。昨季は5.52とさらに凄みを増した。日本球界復帰が噂される巨人のエースの先輩に当たる上原も日米通算K/BBが6.86。どちらも安定感抜群の負けない投手として首脳陣からの信頼も非常に厚い。逆に奪三振数の割にK/BBがそれほど高くない投手は「いい球持ってるのになぁ」と周囲に歯痒い思いをさせることが多い。
2年生右腕が石川県勢初の優勝に導けるか
もちろんアマチュアでも有効なこの指標、選抜に出場する投手の成績を調べてみると(本来は四球のみで計算するところ、四死球のデータしか持っていないので死球も含んでます。そのため通常のK/BBより低い数値になっています)大阪桐蔭が誇る3本柱のK/BBは
柿木 2.69
根尾 3.67
横川 2.62
投球回数が柿木、横川に比べて少ないこともあるが投打にセンス溢れる根尾がさすがの数字を残している。根尾を含め、主戦クラスでK/BBが3.5以上をマークしたのは以下の8人
奥川(星稜) 6.3
重吉(日本航空石川) 6.25
鶴田(下関国際) 5.1
浴本(瀬戸内) 3.7
根尾(大阪桐蔭) 3.67
佐藤(由利工) 3.61
衞藤(聖光学院) 3.55
伊原(智弁学園) 3.5
何より目を引くのは奥川(星稜)と重吉(日本航空石川)の2人。石川で覇権を争うライバル校の下級生の数字が突出している。奥川と重吉はどちらも新2年生。星稜も日本航空石川も上級生に好投手がいるが、故障や不調で秋は本来の力を発揮出来なかった。監督にとっては想定外で苦しい采配となったはずが、下級生の大活躍により北信越大会決勝に進出。共に選抜切符を勝ち取った。
奥川は来年のドラ1候補として名前が挙げられる程の逸材で、中学時代にはバッテリーを組む山瀬と共に軟式で日本一を経験している。
日本航空石川は旧チームから主軸が残り、打線の破壊力は全国でもトップクラス。投手陣も昨夏の甲子園マウンドを経験した大橋、杉本と駒が揃っており、連戦はむしろ望むところ。
石川県から2校同時選出は24年ぶり。この両校、石川大会決勝に続いて北信越大会決勝でも対戦しており成績は1勝1敗。選抜では抽選の段階で同一県同士を別ゾーンに分けるため、当たるとしたらまたしても決勝戦。これまで石川県勢は春夏共に甲子園優勝経験が無い。歴史を変える春に出来るか。