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大和争奪戦のDeNAとオリックス、対照的な二遊間の守備事情

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

 内外野共に守備力は球界屈指。阪神からFA宣言した大和に対しDeNAとオリックスが獲得に名乗りを上げている。大和は阪神でレギュラー定着とまではならず、重視しているのは出場機会。すでに交渉を行ったDeNAとオリックスは共にレギュラー格の選手として迎え入れる考えを伝えたとされている。どちらの球団もセカンドを固定出来なかった今シーズンだがUZR(守備力を得点換算した指標)を見てみると、二遊間の守備事情には大きな開きがあった。

DeNA

 セカンド −7.7

 ショート −17.0

 ショートで全試合フルイニング出場を果たした倉本だが指標ではいい数字を残せていない。ここに大和が入れば失点を大きく減らせるだろう。攻撃力を見てもRC27(1番から9番までその選手1人で打線を組んだら何点入るかを示した指標)は倉本が3.20で大和が3.62。爆発的にとまではいかないが得点力アップも見込まれる。ただ倉本に対するラミレス監督の評価は高く、大和の獲得に成功した場合でもセカンドで起用する可能性が高そうだ。セカンドでは今季終盤に柴田が台頭したが、RC27は2.83。来季、さらなる飛躍を遂げる可能性もあるが未知数な部分も多く、確実性を求めるなら大和となるのか。それでも戦力充実の広島を退けリーグ優勝を果たすためには、セカンドを成長した柴田、ショートを鉄壁の大和が守る二遊間が最も現実味があるように思える。

オリックス

 セカンド 7.1

 ショート 10.8

 秋季キャンプを終えた直後に福良監督も交渉の席に駆けつけ熱意をアピール。ショートには大和と同世代で高い守備力を誇る安達がいるが、難病を抱えているためフルシーズンを戦い抜くことは難しい。セカンドも西野がレギュラーの座を掴み切れなかった。そんなチーム事情もあり二遊間をしっかり守れる選手が欲しいというのが現場の要望だが、二遊間の守備力は強みとなっている。大和が加入することでさらに厚みが増すのは間違いないが、ここから劇的に数字を伸ばすということは考えにくい。ただ大和は2014年にセンターでUZR21.4というかなりの好成績を残しており、外野守備も抜群に上手い。今季のオリックスは打力のある選手を中心に起用した結果、センターのUZRが−15.6。ここに大和が加わると選択肢が増える。DeNAは桑原がセンターでは12球団トップとなるUZR17.7を記録しており、この点は大きな違いだ。

 ちなみに阪神は、主力として活躍する鳥谷、福留、糸井が打撃ではもちろんプラスの数値を叩き出す反面、守備面では揃ってマイナス。ベテラン頼みの布陣を敷いた結果、チームUZRは−56.9でこれは12球団ワースト。10位のロッテが−24.7、11位のヤクルトが−38.0だから守備で抱え込んだマイナスは非常に大きい。大和が抜けた場合、傷口はさらに広がってしまう。守備のスペシャリストの決断やいかに。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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