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佐々木も岩瀬も藤川も超えた。NPB史上最強守護神・サファテ

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

 9月5日に京セラドーム大阪で行われたオリックス×ソフトバンクの19回戦、延長戦にもつれ込んだ試合はソフトバンクが6-5で勝利した。ソフトバンクは11回表に1点を勝ち越すとその裏にはサファテがマウンドへ。連続三振で2死を奪った守護神は、最後の打者もレフトフライに打ち取りゲームセット。きっちり3人で締めこれが47セーブ目。岩瀬(中日)と藤川(阪神)が持っていたシーズン最多セーブ記録を更新した。日本新記録を打ち立てたサファテはその後も最終回のマウンドを支配し続け、最終的には54ものセーブを積み上げた。

 66試合に登板し失点したのはわずか7度。2勝2敗54セーブ、防御率1.09という圧倒的な成績を残した。この投球、結果はもちろんだがその中身もWHIP0.67、FIP1.12と常識外れの数字を残している。

 WHIPは(被安打+与四球)÷投球回で計算され1イニングに何人の走者を出したかという投球の安定感を示す。目安は1.2を切れば優秀、1.0を切ればかなり優秀だ。

 FIPは(被本塁打×13+与四死球×3ー奪三振×2)÷投球回+3.12で計算され、投手の真の実力を示す指標と言われている。一般的に重視されるのは防御率だが、自責点となるか非自責点となるかは記録員の主観が絡む。それに対しFIPは計算の対象となるのが被本塁打、与四死球、奪三振だから全て客観的な事実であることに加え、野手の守備力による影響を受けない。防御率よりシーズン毎のバラツキが少なく次年度の成績を予測するという観点からでも有用な指標。防御率と似たような数値となることが多く、擬似防御率として見ることも出来る。

 サファテの54セーブ、WHIP0.67、FIP1.12を球史に残る偉大な守護神達と比べてみると

 佐々木(横浜)

 1998年 45セーブ WHIP0.80 FIP1.31

 岩瀬

 2005年 46セーブ WHIP1.03 FIP1.82

 藤川

 2007年 46セーブ WHIP0.82 FIP1.34

 今季のサファテは1998年に38年ぶりのリーグ優勝を果たし流行語大賞にも選ばれたハマの大魔神こと佐々木、954試合登板と通算404セーブという2つの日本記録を保持する岩瀬、プロの打者がわかっていても打てない火の玉ストレートをガンガン投げ込んでいた全盛期の頃の藤川さえも上回る。もちろんこの3人は自己最多のセーブを挙げた年以外にも好成績を収めているが、サファテのWHIP0.67、FIP1.12に届いたことは1度も無い。

 勝ち星やセーブ数はチーム状況、防御率は記録員の判断や野手の守備力の影響を受けての記録だが、サファテは年間最多セーブ記録を塗り替えただけでなく投球の中身自体も球史に残るクローザー達を大きく上回っている。NPB史上最強の守護神と呼ぶに相応しい。

 サファテを守護神に据えるソフトバンクのリリーフ陣はCSファイナルステージで16回1/3を無失点。下克上を狙った楽天打線を全く寄せ付けなかった。日本シリーズの相手はまだ決まっていないが、リードして最終回を迎えれば、ソフトバンクの勝利はほぼ間違いない。なぜならサファテの名前がコールされた時、相手に与える絶望感はNPBの歴史上最大のものだから。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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