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パリーグ頂点への道。優勝の条件はこれだ!

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

得点と失点から妥当な勝率を計算するピタゴラス勝率。式は

(得点の2乗)÷(得点の2乗+失点の2乗)

とそれほど複雑では無い。これを昨季の成績に当てはめてみると実際の勝率との差はソフトバンクだけ約6.5%と大きいが、その他の球団は0.1~3%前後、勝利数に換算すれば9球団が±3の範囲に収まる。完全に信頼出来る、とまでは行かなくとも十分参考になる数字と言えるだろう。

この計算式と昨季の得失点を基準に優勝の目安となる80勝を挙げるためには各球団何が必要か、優勝の条件をまとめた。

楽天・・・田中の穴を全員で埋める

628得点(リーグ2位)、537失点(リーグ2位)と安定した数字でパリーグを制した楽天、当然岡島、銀次、枡田ら昨季活躍した若手野手へのマークはきつくなる。

そして何より大きいのがメジャーに挑戦する田中が抜けた穴。田中は212イニングを投げ35失点。平均的な投手と比べて58点もの失点を防いでいたということになる。もしルーキー・松井がプロとしてやって行けるレベルの活躍、つまり1軍平均クラスの活躍を見せたとしても失点は58点増えて595点。しかもこれだけのイニングを投げるとは考えにくい。得点で昨季の12球団トップ、ソフトバンクと同じ660点を挙げても79.4勝で80勝にギリギリ届かない。やはり、マー君の抜けた穴はとてつもなく大きい。誰かが1人で代わりを務めるのは不可能に近いから、連覇のためには、ありふれた言い回しだが投打共に底上げが必要だ。

西武・・・中村の復帰と最強の先発陣形成を

昨季89得点を生み出したヘルマンの流出は大きな痛手。これは浅村、栗山に続くチーム3位の数字でパリーグの中でもトップ10に入る。打てて走れるヘルマンが就いた三塁のポジション、今季は中村がどっしりと座るはずだったがケガの回復具合はどうか。過去の実績を見ると中村がシーズンを通して試合に出続けると生み出す得点は110点前後。中村がいるかいないかで打線の迫力はまるで変わってくる。昨季リーグトップのOPSを記録した浅村との大阪桐蔭コンビで打線の中核を担いたい。

中村の復帰で仮に得点が20点増え、590点だとすると、昨季の失点なら予想される勝ち星は75勝。80勝するためには投手陣が失点を34点減らし528失点以内に抑えることが求められる。岸、牧田、菊池は平均的な投手と比べて防いだ失点がそれぞれ15.14点、18.73点、19.32点と非常に優秀な数字を残す。十亀、野上がこの3人と同じぐらいのパフォーマンスが出来れば減らせる失点は約35点となり目標達成。中村の復帰と先発5本柱が機能すれば優勝ラインに手が届く。

ロッテ・・・勝ちパターンの確立を

「最大の補強は俺」と伊東監督が話した通り得失点差以上の勝ち星を挙げた。1点差試合は26勝17敗で貯金9、僅差のゲームをものにするために欠かせないのが勝ちパターンの継投。今季、守護神・益田は成績が向上することが予想される。フェアゾーンに飛んだ打球が安打になった割合を示すBABIP、これは同じ選手でも年によってばらつきがある指標でこの数字が大きいと野手の間に落ちる不運な当たりが多かったということになる。昨季の益田は2012年の.259から.346へと1割近く数字が増えた不運な年だった。今季は投球の質が悪化しない限り被安打は減るだろう。

そう言えば31年振りに日本一に輝いた2005年も薮田、藤田、小林雅のYFKがチームを支えていた。大エースやスラッガーがいなくてもしぶとく戦うのが持ち味。勝利の方程式を確立することがリーグ制覇の条件だ。

ソフトバンク・・・QS率の改善で横綱野球を

昨季は12球団トップの660得点に、ほぼリーグ平均と同じ562失点で得失点差は+98。83勝してもおかしくなかったが結果はBクラス。するとオフには元々厚かった戦力を更に補強。

唯一適任者が見つからなかった4番にオリックスから李大浩を獲得。これで打順別、ポジション別OPSに穴は全く見当たらず打線の破壊力はリーグ屈指だ。

投手陣でもローテーション投手候補を次々と補強。昨季はエース・攝津に頼り切りだった先発陣、QS率(6回以上を投げ自責点3以下の割合)は39.6%で12球団ワーストだった。QS率さえ改善出来れば横綱野球で押し切れる。戦力面から見れば優勝候補筆頭に間違いない。

オリックス・・・安定感ある投手陣にT-岡田の援護射撃を

オリックスは、平野、岸田(今季は先発に転向)、佐藤達の強力なリリーフ陣に、エース金子を擁しチーム防御率はリーグトップ。特に金子は沢村賞の基準を全て満たしマー君、マエケンと並ぶNPBの大エースだ。ドラフトでは吉田、東明と即戦力の社会人投手を獲得しブルペンの層を更に厚くした。

課題は12球団最少の513得点に終わった攻撃力。しかも、主砲・李大浩、クリーンアップの一角・バルディリスが流出して臨むシーズンで。更に充実した投手陣が失点を減らし、昨季の失点12球団トップ・阪神の488失点まで抑えたすると、求められる得点増は33点。移籍組のヘルマンとペーニャで流出した主軸の穴を埋め、浪速のゴジラ・T-岡田のバットで得点を上乗せしたい。33本塁打を放った2010年には90得点以上を生み出し、これは昨季の李大浩と遜色無い数字。安定感ある投手陣を生え抜きの大砲が援護し、親会社の創立50周年に華を添えられるか。

日本ハム・・・主軸と主戦が活躍しプラスαは大谷

リーグ優勝から一転、最下位に転落した日本ハム、昨季の得点534点はリーグ5位で失点604点はリーグワースト。優勝するためにはどちらも大幅な改善が必要だ。

死球を受け骨折した影響で108試合の出場に留まった中田、本塁打王・アブレイユがシーズン通して活躍することは絶対条件として、新加入するキューバの大砲・ミランダが日本の野球に対応出来るか。一塁手と三塁手はポジション別OPSで他球団に大きく差をつけられているだけに助っ人がハマれば弱点は解消出来る。

投手陣では、規定投球回に到達した木佐貫、吉川は平均的な投手と比べわずかながらマイナスの評価だった。チーム全体でも2012年は失点を33点防いでいたが、昨季は44点も多かった。吉川と武田勝が2012年のパフォーマンスを取り戻すと今季の失点は55点減る計算になる。

主軸と主戦が活躍し得点を55点増やし、失点を55点減らしても80勝にはあと3勝足りない。投打両面でプラスαを期待したいのが大谷。中6日のローテーションを守りながら野手としても週に2、3試合出場する見込みだが球界初の二刀流は成功するか。最下位からのV字回復には主力の活躍と大谷のプラスαが必要だ。

セリーグ頂点への道

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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