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東西金満球団の補強とチーム事情

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

球団事務所も仕事納めを迎え、各球団とも来季へ向けた戦力補強は概ね終了した。活発な動きが目立ったのは豊富な資金力を誇るソフトバンクと巨人。やりすぎでは、とさえ思える補強をチーム事情と照らし合わせてみる。

ヤンキース化するソフトバンク

今オフにドラフト以外で獲得した選手

中田賢一

ウルフ

サファテ

スタンリッジ

岡島秀樹

鶴岡慎也

李大浩

カニザレス

李大浩の加入で打線に隙無し

今季のソフトバンクはチーム打率、本塁打、得点全てリーグトップ。中村、今宮らが成長し内外野共に人材は豊富。優勝した交流戦では内川、松田、長谷川の和製クリーンアップが打率トップ3を独占し、OPS(出塁率+長打率)も内川1.084、松田.953、長谷川1.013と全員がMVP級の数字を残した。

ただシーズンを通して主軸を任せられる真の4番がいなかったことも事実。打順別OPSを見るとほぼ全ての打順で好成績を残す中、意外なことに4番だけはリーグ平均を8分近くも下回る。日本での実績豊富な李大浩の加入は心強い限りだろう。ただし気になるのは枠の問題。1軍登録できる外国人選手は4人までとされている。4番を任されるであろう李大浩は確実として、ウルフ、スタンリッジ、サファテが今季と同じようなパフォーマンスを発揮出来ればそれで枠が埋まってしまう。来季も残留するラヘアにとっては勝負の、新加入のカニザレスにとってはいきなり試練のシーズンとなりそうだ。

頭数だけならローテが2回組める

先発3枚、リリーフ2枚が加わる投手陣、今季は15勝を挙げた攝津がエースとして引っ張った。しかし、チームで投球回が100回を超えているのは攝津1人だけ。帆足、寺原、武田、大場、新垣・・2桁勝利を挙げていてもおかしくない顔ぶれだが総じて安定感を欠くシーズンとなった。

先発陣の防御率4.14はロッテの4.16をわずかに上回りリーグ最下位を免れるが、攝津を除いて計算すると4.43まで悪化する。

来季は上記の面々に中田、スタンリッジ、ウルフが加わるのだから少なくとも3人はローテから外れる。他にも山田や東浜らの有望株やオセゲラ、バリオスらも虎視眈々と先発マウンドを狙っている。

候補の人数としては両手の指を全て使っても数え切れない。攝津に続く先発として若手が出て来ればそれも良し、外国人選手が期待通りの働きをすればそれも良し。調子が悪ければ代わりはいくらでもいる、とでも言わんばかり。戦力のだぶつきよりも勝利を優先する姿勢はまるでヤンキースのようだ。

明日を見ながら、今を戦う巨人

今オフにドラフト以外で獲得した選手

大竹寛

セドン

井端弘知

片岡治大

アンダーソン

片岡が穴を埋め、井端が幅を広げる

昨季が10.5ゲーム差

今季が12.5ゲーム差

セリーグ全チームに勝ち越し2位に大差をつけて連覇を果たした巨人、豊富な戦力を誇るが唯一足りないのが2番・セカンドのピース。今季12人が2番を務めたが誰も定着するには至らなかった。今オフは長年のウィークポイントを埋めるべく実績十分の井端、片岡を獲得。

一見ポジションがかぶるように見えるが片岡をセカンドのレギュラー、井端をバックアップ要員とするようだ。打撃で成長を見せた中井、俊足が武器の藤村らの出場機会が減るのは個人的に残念だが、井端がいれば、片岡のみならず坂本にアクシデントがあった場合にも対応できる。

また、代打で.358というハイアベレージを残した矢野と共に、井端の職人技と言えるしぶい右打ちはベンチにとっても心強いだろう。

他球団の代打は1打席でお役御免となることが多いが、巨人の場合は代打の選手がそのまま守備に就き、遠い打順に投手を入れることがままある。二遊間がこなせる井端の加入で選択肢は更に広がるはずだ。

大竹は勝ち星を伸ばす

ホールトンが抜けた投手陣では、韓国最多勝左腕・セドン、そして年間通してローテーションを守り抜ける大竹を獲得。

今季は10勝10敗と貯金の出来なかった大竹だが、その特徴は大崩れしないこと。QS率(6回以上を投げ自責点3以内に抑えた割合)68%は、エース・内海を上回る。ブルペンには鉄壁の救援トリオが控えるだけにチームは接戦に強く、1点差試合での貯金8はセリーグトップ。大竹が序盤で崩れることなくきっちり試合を作れば勝ち星は伸びそうだ。

充実した戦力を誇るが不安が全くないわけでもない。主力クラスの年齢がベテランの域に近づいており、レギュラーで若手と呼べるのは坂本だけ。

今ドラフトでは5人を指名したが、その内4人が将来性重視の高校生。唯一の社会人ルーキー・小林も活躍してもらわないと困る即戦力、というよりは将来的に大黒柱・阿部の後継者となることを期待しての指名。豊富な戦力が可能にした余裕のドラフトだったというわけだ。

矢野、亀井ら他球団ならレギュラークラスの選手が控えに回る戦力で戦いながら、中・長期的なビジョンでのチーム作りも着実に進行。数年後も優勝争いの中心にいることは間違いなさそうた。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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