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「守備が弱点」。それは久保建英の正しい評価か?

小宮良之スポーツライター・小説家
パラグアイ戦、包囲からパスを出す久保建英(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

「パラグアイ戦は、久保の大暴れ。相手はファウルでしか止められず!」

 スペインの大手スポーツ紙「マルカ」のWebサイトは、そうしたタイトルで日本代表MF久保建英(18歳、マジョルカ)の無双ぶりを紹介している。

 後半から出場した久保は、右サイドを主戦場にパラグアイのディフェンスを痛めつけた。二人に囲まれてボールを失いそうになっても、するすると抜け出し、包囲網を破る。一度奪われたボールが再び久保の足元に自ら戻ってくる錯覚すら与えた。

<ボールに愛された選手>

 久保はボールを味方につけた時、ほとんど無敵だった。

 一方で、国内では批判的な論調も出た。

「守備ができない」

 それは正当な久保評なのか――。包囲から抜け出したシーン、最初、久保は相手からボールを奪っていた。

久保のゴールへ驀進する力

「Desequilibrante」

 パラグアイ代表のエドゥアルド・ベリッソ監督は、「バランスを崩せる」というスペイン語で、久保のプレーを端的に表現した。

 パラグアイは、久保の対応に明らかに苦慮していた。集団で囲んでも、網を抜けられてしまう。進路をどうにかふさぐと、あっさりパスを出される。ボールスキルの高さに、面食らっていた。

 なにより久保が抜きん出ていたのは、ゴールへ驀進する力だろう。

 まずFKから2度にわたって、直接狙っている。また、ドリブルに入った時は、常にシュートの選択を持っていて、しばしば躊躇わず足を振っている。右サイドを抜け出し、角度のないところから果敢に打ったシュートは、惜しくもバーをたたいた。後半だけで、5本ものシュートを打った。簡単に聞こえるかもしれないが、90分間プレーした南野拓実と同じ、両チーム通じて最多である。

 パラグアイ戦、久保のプレーは決して悪くはない。むしろ、上々と言えるだろう。相手守備陣に、脅威を与え続けた。

守備は弱点か?

「守備の強さが足りない。上げてもらう必要がある」

 森保一監督がそう言ったことで、守備の指摘が出たのだろう。もっとも森保監督は会見で、その前段としてこう説明している。

「久保は起点になってくれたし、個で仕掛け、攻撃ではいい部分が出た。周りを使うこともできている。彼はオプションになっていると言えるだろう。攻守のコンセプトにおいて、チームとしての戦いを具現化するためにトライしてくれている」

 ほとんど手放しの称賛だった。その上で、守備はまだ改善の余地がある、とくぎを刺したのだ。

 サイドでの守備は、トップ下よりも負担がかかる。ポジション的に相手の侵入を防ぎ、パスコースも消す、という行為を同時に正確にやる必要がある。また、周りと連携しつつ、奪えるボールは猛烈に食らいつく必要がある。フィジカル的にも、戦術的にも成熟が求められる。

 その点、久保の守備には改善点はあった。

 しかし、18歳で完成した選手など世界中どこにもいない。守備の強度を身につけるには、一朝一夕ではいかないだろう。久保は1年前と比べれば、著しい成長を遂げている。戦いの中でインテンシティは高めるしかない。スペインの1部のクラブで定位置を争い、ポジションをつかみ取った時、今よりも隙のないプレーヤーになっているはずだ。

求められる決定力

 久保に求められるのは、むしろ「決定的な仕事の精度」のほうだろう。その質を高められるか。例えば、左サイドを完全に破って得た左足のシュートは、相手が出した足に当ててしまった。アタッカーはゴールを放り込めば、敵を撃沈できる。

「久保のリサイタル」

 スペインのバルセロナ系スポーツ紙も、そのプレーを絶賛した。もしゴールを決められたら――。リサイタルは完璧だった。

「ほかの選択肢もある中でシュートを打っているので、打つなら決めなければならない」

 パラグアイ戦後、久保自身が自戒の念を込めて語った。彼は攻撃のエースとして、試合を決する覚悟があるのだろう。その尖った姿勢だけが、正念場を迎えたチームを救える。彼のような選手は、シュートでネットを揺らすことによって、守備も好転させられるはずだ。

 9月10日、日本は2022年カタールワールドカップ、アジア二次予選の初戦をミャンマーと戦う。はたして、久保はゴールを決められるのか。決めた場合、日本代表史上最年少得点となる。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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