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Amazonがロケット3機調達、競合マスク氏率いるスペースXから 26年までに衛星1600基打ち上げ

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
大型ロケット「Falcon 9」(出典:米SpaceX)

米アマゾン・ドット・コムは2023年12月、通信衛星を打ち上げるためのロケットを、米起業家のイーロン・マスク氏が率いる米スペースXから調達すると発表した

26年までに人工衛星1600基打ち上げ必須

全長70メートル、直径3.7メートルの大型ロケット「Falcon(ファルコン)9」3機の打ち上げ契約をスペースXと結んだ。アマゾンはこれまで他社からロケットを調達してきたが、2026年7月までに約1600基の衛星を配備する必要があり、調達先を衛星通信サービスで競合するスペースXにも広げた。

スペースXのウェブサイトによると、同社のロケット1機当たりの標準料金は6700万ドル(約94億円)だ。

アマゾンは19年から「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」と呼ぶインターネット衛星ネットワークの計画を進めている。24年内のサービス開始を目指しており、地球上のどこでも利用できる高速ブロードバンド接続を大規模に展開したい考えだ。

米CNBCによれば、同社は3236基の衛星を地球低軌道(low Earth orbit、LEO)に配備する許可を米連邦通信委員会(FCC)から得ている。だが、その条件として26年までに計画の半分を配備することが求められている。

商業衛星大手と相次ぎ契約もいまだ試験段階

英Reuters(ロイター通信)によると、アマゾンはこのプロジェクトに総額約100億ドル(約1兆4100億円)を投じる計画だ。大量の衛星を配備するため、これまでに77機の大型ロケットを確保している。

22年4月にはそのための契約を米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(United Launch Alliance、ULA)や、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏率いる米宇宙開発ベンチャーのブルー・オリジン(Blue Origin)、フランス商業衛星大手のアリアンスペース(Arianespace)と結んだ。

23年10月には、同社初の試験衛星2基を載せたULAの大型ロケット「Atlas(アトラス)V」を打ち上げ、同年11月にその初期の試験通信に成功したと発表した

スペースXはすでに5100基配備

一方で、衛星通信サービスではスペースXの「Starlink(スターリンク)」が先行している。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、スペースXは23年9月までに約5100基の衛星を軌道に配備した。

同紙の別の記事によると、現在は世界60以上の国・地域に計200万人以上のアクティブユーザーがおり、その22年の売上高は14億ドル(約1970億円)だった。

これに比べ、米アマゾンにはまだ実績がなく、今後打ち上げのペースを速める必要がある。WSJによると、アマゾンは、さらに8機のAtlas Vを確保している。今回発表した3機のFalcon 9については25年半ば以降の打ち上げを予定している。

アマゾンの発表によると、このほか、ULAのロケット「Vulcan Centaur」での38回の打ち上げ、アリアンスペースのロケット「Ariane 6」での18回の打ち上げ、ブルー・オリジンのロケット「New Glenn」での12回の打ち上げ計画があり、ブルー・オリジンとの契約にはさらに15回の打ち上げオプションがある。

アマゾンは23年7月、米フロリダ州に人工衛星を打ち上げるための準備施設を建設中だと明らかにした。施設の場所はケネディ宇宙センター内。面積は約9300平方メートルで、大型ロケットのペイロードフェアリング(ロケット先端部分)を収容するための高さ約30メートルのクリーンルームを備える。

Project Kuiperには現在、約1400人の従業員が携わっている。20年には人工衛星の研究開発拠点を米ワシントン州レドモンドに、専用製造工場を同州カークランドに開設した。このほか、カリフォルニア州サンディエゴやテキサス州オースティン、ニューヨーク市、首都ワシントンにもプロジェクト拠点がある。

筆者からの補足コメント
アマゾンのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は昨年10月、Project Kuiper事業について、「当社の主要ビジネスになる可能性がある」と自信を述べていました。「世界中にはいまだ、安定したインターネット接続サービスを利用できない世帯や企業が数多くある」(同氏)。同氏はクラウドサービス事業を例に挙げ、「アマゾンの技術力と経営資源をもってすれば、この市場で競争力のある数少ないプレーヤーの1社になれるだろう」と意気込みを示していました。

(※1ドル=141円で換算)

  • (本コラム記事は「JBpress」2023年12月07日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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