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半導体大手インテルとAMD、PC市場の回復とAIに期待 NVIDIAは絶好調

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米調査会社のIDCによると、2023年7〜9月期の世界パソコン出荷台数は6820万台で、前年同期から7.6%減少した。パソコン販売は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時の巣ごもり需要に伴い2年にわたる成長の後、2022年初頭から急減していた。

だが、この7〜9月期の減少率は、それまでの5四半期における2桁減少に比べ改善した。IDCは調査リポートの中で、パソコン市場は今後緩やかに回復すると予想している。

AMDのPC向け半導体42%増、インテル3%減

こうした状況は、パソコン向け半導体を手がける米Advanced Micro Devices(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、AMD)や米Intel(インテル)の23年7〜9月期の業績結果からも見て取れる。

AMDの23年7〜9月期におけるパソコン向け半導体の売上高は、前年同期比42%増の15億ドル(約2300億円)だった。同社の事業部門にはデータセンター向け半導体やゲーム向け半導体もあるが、それぞれ前年同期比横ばいと8%減で、増収となったのはパソコン向けだけだ。

インテルの23年7〜9月期におけるパソコン向け半導体の売上高は79億ドル(約1兆1900億円)で、前年同期から3%減少した。だが、米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、この減少幅はアナリストらが予想していた10%減よりも小さかった。

ロイター通信は、「AMDとインテルの最新の業績結果はパソコン市場の回復が加速していることを示すものだった。パンデミック後の供給過剰に苦しんできた業界にとっては朗報だ」と報じた

24年のPC向け半導体需要に楽観的

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、24年のパソコン向け半導体の売上高について、AMDは前年比27%増を、インテルは同13%増を見込んでいる。これは、市場の回復に対する両社の高い期待感が表れているという。

その根拠の1つとなっているのは、24年に登場が予想されているAI(人工知能)搭載パソコンが大ヒットするという両社の確信だと、同紙は報じている。ロイターによると、両社の幹部は今回の決算説明会で、AIの(パソコンへの)統合が市場成長を後押しする、と自信を示した。

AMDのリサ・スーCEO(最高経営責任者)は、「AI搭載パソコンは今後数年にわたってコンピューティング体験を根本的に再定義するだろう」と語った。インテルのパット・ゲルシンガーCEOは「AI搭載パソコンの登場は、パソコン業界における転換点を意味する」と述べた。

生成AIブームでNVIDIA製GPU需要増

一方で、両社が主要事業の1つとしているデータセンター向け半導体の市場では、変化が起きている。昨今の生成AIブームで、米NVIDIA(エヌビディア)製GPU(画像処理半導体)をベースとしたアクセラレーテッドコンピューティングに対する需要が高まっている。

米マイクロソフトや米グーグル、米アマゾン・ドット・コム、米メタといったテクノロジー大手は、設備投資の多くをAIサーバーの構築に振り向けており、エヌビディアがその恩恵を受けている。

エヌビディアのAI向け半導体を含むデータセンター部門の23年8〜10月期売上高は、145億1000万ドル(約2兆1600億円)となり、前年同期の約38億ドルからほぼ4倍に増加した。

この四半期の同社全売上高は前年同期比約3倍の181億2000万ドル(約2兆6900億円)となり、過去最高を更新した。純利益は約14倍の92億4300万ドル(約1兆3700億円)で、こちらも過去最高だ。売上高、純利益ともに市場予想を上回った。

筆者からの補足コメント:

比較のためにデータを記しておきます。インテルの23年7〜9月期におけるデータセンター向け半導体事業の売上高は前年同期比10%減の38億ドル(約5700億円)でした。なおインテルが最近力を入れているファウンドリー(製造受託)事業の売上高は3億1100万ドル(約468億円)で、全体のわずか2%にとどまっています。一方、AMDの同四半期データセンター向け半導体の売上高は同横ばいの16億ドル(約2400億円)でした。

  • (本コラム記事は「JBpress」2023年11月8日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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